祝2023:ゴルフ中継の新たな時代に向けて(3)

3. コメンタリーのあり方

実況、解説って何?

REX倉本さんと「はっら〜」連発

 アナウンサーという言葉は日本では限定的に使われますが、アメリカでは解説者もアナウンサーに括られます。その中で、主にプレイの実況描写と進行役的な役割をするのがプレイ・バイ・プレイ・アナウンサー、主に技術的解説をするのがアナリスト。日本の解説者と同様、アナリストには元ツアープロの履歴を持つ人が多いですが、アナリストもプレイ・バイ・プレイはするし、複数人のアナリストだけによる実況中継も見られます。イギリスでの役割分担はその時の組み合わせ次第という印象ですが、実況描写は試合進行に応じて出演者全員がするようです。

 日本ではオーソドックスなコメンタリーのスタイルとして進行及び実況描写役と解説者が明確に区別されますが、ネット配信も本格化しようとする今、両者がクロスオーバーするだけでなく役割自体も多様になる可能性を秘めているのではないでしょうか。私自身はクラブ競技の経験はあっても競技者ゴルファーではないので、競技中のプレイヤーの視点や心理について推測はしても分析することはありませんし、ハンディーキャップも一桁にならない週末ゴルファーですからスウィングやショットの技術に関して描写はしても解説はできません。しかし、大会や開催地の歴史や特長、プレイヤーの経歴や戦績、そしてツアーの仕組みや世界のゴルフニュースについては中継で折に触れて詳細に説明しますから、単なる進行役とは言えないかもしれません。「ゴルフおたく的実況アナ」とでも申しましょうか・・・。

必要なのは情熱

 全く異なる分野のエキスパートをゲストとしてコメンタリーチームに組み込むことはすでに試みられてきたことですが、元ツアープロのアナリストだけでなく、例えば、コース設計家や芝の研究者なら常に話題に事欠かないでしょうし、ファッションの専門家も同様、あるいはプロゴルフもビジネスですし、最近の賞金額の高騰もあって経済の専門家がレギュラーでコメンタリーを受け持ったら面白いのではないかと、私は密かに思っています。私自身がスポーツ科学を学んだ元体育教師であったことから、ゴルフ中継にはその立場から言えることがあるなと感じていました。大切なのはその人のコミュニケーション能力、そしてそれ以上に、何かを伝えたいという願いと情熱、でしょう。ただ、伝え手になるのなら、私は全員がゴルファーであるべきだとは思います。それは心配ないでしょう。ゴルフ好きの人はどこにでもいますから。コメンテータなら上手なゴルファーでなくてはならない、とは思いません。私自身が万年ダファーだからですが、だから人一倍の情熱を持っているのだと自己弁護しておきます。

いつ黙るべきか

現場の生音があればコメンタリーはなくても良い。画面にプレイヤー名やホール、残り距離、リーダーボードなどがグラフィックで示されれば事足りる」という視聴者もいることでしょう。私はそこをミニマムとしてコメンタリーを考え始めました。自分の声をかぶせるなら、いつ、どんな場面で、どんな言葉を使い、何を描写するのか。言わなくてもいいことはあるのか。そして、言わなくてもわかることを敢えて言葉にすべきなのはどんな時なのか。

 当初は、常に何かを喋り続けていなくてはいけない、という強迫観念に似た思いに苛まれていたように思い出しますが、コメンタリーなしでも成り立つということを出発点にして考え始めてから、黙り込むことも怖くなくなりました。基本的にゴルフなのですから、誰かが打たんとする時に喋るのがご法度なのは、ゴルファーのマナーとしてすぐにわかります。でも、他のタイミングでも黙るべき時があるのが感じられるようになりました。逆に、打とうとしているプレイヤーの映像に構わず喋り続けることも「あり」だと思うようになりました。そうしたタイミングが「いつ」なのかは、説明しにくいところです。優勝が決まった瞬間なら、黙ってみていた方がプレイヤーの気持ちが伝わりやすいかもしれませんし、逆に派手に盛り上げた方が似合う勝ち方もあるんですね。コメンテータの沈黙に意味のある場合もあるし、視聴者の生理的な状態を想像できるかどうかということかもしれません。直感的にわかるようなものであるのかもしれませんし、つねに自分のセンスと反射神経、運動神経が試されているようにも感じます。饒舌と沈黙は中継にメリハリを生みます。作戦を立てることもありますが、実際には次に何が映し出されるかわからない受け身の仕事であり、相方のコメンテーターとの会話になる場面も多く、思い通りにはいきませんけどね・・・。

今田竜二プロの楽しいゲスト解説

知識とキャラクター

 コメンテーターなら知っているべきこと、いわばゴルフ教養とでもいうべきもの。ルールをはじめ、ゴルファーなら当然知っている半ば常識的なことはもとより、600年以上もの昔から連綿とつづけられてきたゲームの歴史とユニークな用語についての知識は、コメンタリーに幅と深みと信頼感をもたらします。ゴルフは言葉のスポーツ。知識は言葉。その伝え方がその人物のキャラクターです。いい人なのか、ハートはあるのか、あるいは薄っぺらな偽善者なのか。長時間のゴルフを見ながら話を聞かされる視聴者には、全てがお見通しになるのです。

<ゴルフ中継を視聴していてどんな感じがしますか?>

楽しい、面白い、エキサイティング、愉快な、真面目な、役に立つ、明るい、やさしい、快い、豊富な、幅広い、深い、鋭い、くだけた、ゆるい、自由な、温かい、はっきりした、暗い、つまらない、うるさい、ふざけた、難しい、鈍い、浅薄な、平板な、間違った、無関係な、余計な、不快な、冷たい、物足りない、ぼんやりした・・・

プロゴルフ観戦は楽しくなくてはならない

 競技としてのゴルフは真剣勝負ですが、プロのトーナメントは見る側にとっては娯楽です。語弊はあるかもしれませんが、卓越した競技力のぶつかり合いは、それだからこそ見る側には質の高い娯楽になりうるわけです。優れた競技力を有するプレイヤーたちによる最高のパフォーマンスこそ、最高の商品価値を生み出し、強力なメディアとなります。そこで一役買うのがコメンタリー。果たしうる役割は、画面の補足説明であり、背景にある物語の提示であり、そして楽しさの演出だと私は考えます。(続く)

*ネット配信は多様なスタイルが可能?

コメンタリの要素 スタイルプログラム進行画面描写補足説明背景情報詳細情報楽しさの演出ユニークさ
かつての地上波TV    
NHK BS放送   
ゴルフ専門局  
   
  
ネット配信
    
     
     

祝2023:ゴルフ中継の新たな時代に向けて(3)」への2件のフィードバック

  1. [ コメンタリーのあり方 ]
    女子ゴルフ、上がりの方の半端なほぼダイジェスト版を、音量消して観戦。
    実況は、人気選手の(下位でも)よいしょ、解説プロの昔話、そして定番なんとか世代の年令情報しかない。クレバーな、「ゴルフおたく的実況アナ」のお方とは程遠い軽薄。
    それでも興奮。ガッツあるし曲がらないし、何んと言ってもパットが上手い。
    LPGA、PGA、DP World Tourは、ちゃんとちゃんとに歓声付で、何度も何度も時代物も繰り返し繰り返し観ております。
    Happy Golfing!

    いいね: 1人

    1. 探し出して読んでいただいてありがとうございます。「プロゴルフ激動のとき」は2024年も続きそうですね。コメンタリーの担い手(制作サイド)だって必要な改革を迫られている気がしますが、問題意識のある当事者は少なくて、無難なひよりみ主義、御都合主義に埋没してるのかもしれません。こう書けばますます仕事はもらえないかなあ・・・。

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