有明の飛ばし屋

いまや臨海副都心という呼び方も古くさいのだろうし、日本を離れた2002年までの記憶しかないのだが、私のゴルフ史の中で、過ごした時間の長い場所が有明だった。すぐ先は13号埋立地で何もなかった。道路は新しかったが、昼間はゴミを運び込むダンプしか通らないし、夜は怖いもの知らずのカップルの逢瀬の場所だったかもしれない。改造車で暴走するにわかレーサーたちもいたが、飛ばし屋が集まる場所は決まっていた。いまはなき東京スポーツセンターだ。

背中合わせの打席から南北に打てる。打席も多かったが両側ともフェンスまで250ヤードくらいあったろうか、広々とした開放感もよかった。何より終夜営業だったから、体力に任せてむちゃくちゃな生活をしながらもゴルフに入れ込んでいた私は、夜な夜な通い詰めた。

北側の打席は冬は寒かった。でも対岸の浜松町あたりの夜景に向かってぶっ放すのは爽快で、フェンスの最上段に当たるか、もしかしたら越えたのか・・・という当たりが出ると、疲れもストレスも吹っ飛ぶ思いがした。いろんな人が来ていた。深夜の方が混んでいるのではないかというほどで、2時3時になると銀座のお姉さんたちも来たりする。

みんな真剣に練習していた。飛ばす人は多かったが、その中でも格段にすごい人が何人かいて、その人たちがいると私は後方の打席を陣取って秘密を盗もうとしていた。ある時、黙々と打っているとどうも視線を感じる。振り返るとZ打法の若林貞男さんだった。チャンスだから正式にレッスンを頼もうかとドキドキしていたら、「そのまま思いっきりやりなよ。もっと飛ばせるから」と言い残して行ってしまった。

東京スポーツセンターはいつ行っても盛況だったから黒字だったろうに、親会社の事情で消えてしまったと聞いた。思い出というには、ただ球を打っていただけの場所だったが、うまくなりたいという思い、飛ばしたいという思い、あるいはもしかしたら自分でもなぜだかわからない衝動に駆られて、通い詰めた場所だったから、もうなくなってしまったのは残念だ。深夜練習の帰りにいつも食べる吉牛特盛はうまかったなあ・・・。

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