2017年12月初め、この週は、タイガー・ウッズが4度の手術を要した腰痛を乗り越えて復帰するとあって、ゴルフ界の衆目は遙か大西洋のむこう側のバハマに集まっていました。私の中継担当はモーリシャスオープン。
モーリシャスって、聞いたことあります? 世界のセレブご用達のリゾート。アフリカ大陸の南東2000km、マダガスカルのとなりのインド洋上に浮かぶ楽園の島です。
ヨーロピアンツアーは早くも2018年シーズンが始まっていて、オーストラリア、ゴールドコーストでの豪PGA選手権と同時開催。時系列的には放送は重ならなかったから、日本の最終戦とQT、そして豪、モーリシャス、バハマという順に全部見ていたダイハードなファンもいたでしょう。
ああ年の瀬の夢。それにしても、ゴールドコーストにバハマ、モーリシャス。セイシェルでもモルディブでもタヒチでもいいのに、もはや縁遠いなあとわが身を省みるのもバカバカしく、私は売り込み屋に徹しました。ともかく、振り返ればこの週はまさに、試合展開も含めて、アメリカと対照的なヨーロピアンツアーらしさが溢れていたのでしたね。
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ゴールコーストは豪ツアー(PGAツアー・オブ・オーストラレイジア)との共催。モーリシャスは亜ツアー(エイジャンツアー)と南ア・サンシャインツアーとの3者共催。新しいシーズンも欧ツアーは七つの海を越え、五大陸、26カ国を回る予定・・・。
バハマがプロゴルフ界最高の18人を集めている一方、開催地のイメージこそ引けを取らないにしても、国境なき巡業に明け暮れる名も無きジャーニーマンたち各156名のひしめくイベントふたつを、欧ツアーは公式戦として同じ週に設定。
バハマの賞金総額は350万ドル、欧ツアーは2試合合計で214万ドル(ちなみに東京は健闘の115万ドル)。
富の集中と分配。一極支配的米PGAツアーと地球網羅的遍在的欧ツアー。圧倒的な金額で収束させて浮いてきたクリームだけを掬い取ろうとするアメリカ。一方で、大西洋に太平洋にインド洋の水平線を北に南にどこまでも拡散していくヨーロッパ・・・。
嘆いているのではありません。見たいのはやっぱりビッグネームだという人も多いでしょうが、次のスターを夢見る若手や無名戦士たちがひととき野に咲くさまを楽しみたいという人だっているでしょうから。好き好きでこそ、この世は健全。日本は一つところになびかないで済む国になれるわけですから、踏ん張りましょうや。
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ところで、ゴールドコーストの決着は場所柄にそぐわず爽快感に欠けるものだったかも知れません。プレイオフの末に勝ったキャメロン・スミスは最終日にずっと一人のギャラリーから野次や妨害を受けていて、それを乗り越えなければならなかったらしい・・・。
一方で、モーリシャスの方は44歳のアージュン・アトワルが派手なスタートから最後まで試合を引っ張りましたが、プレイオフに持ち込まれて負けてしまうどんでん返し。
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週明けにマレーシアでイベントがあったために、アトワルは16時間のフライトで到着して、練習ラウンドもなく翌朝から競技開始でした。その初日をめくるめく1イーグル7バーディーの62というスコアでスタートし、リードしたまま最終日を迎えたアトワルは、やはり少し疲れていたようです。
プレイの合間には時折遠くを眺めていました。2002年にヨーロピアンツアーで、2010年には米PGAツアーで、史上初のインド人チャンピオンとなったアトワルも、いまは時折、米欧での招待出場しながら主に亜ツアーに出ていて、年明けには欧亜対抗チーム戦のキャプテンを担うことになっています。キャリアの節目といってもいい年齢となった自分が、この楽園の島で出会い頭の決闘のような優勝争いをしていることに、現実感をもてるものだろうかと、私は甘いマスクの横顔を見て思いました。
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最終日の赤はタイガー・ウッズの勝負服。神話の主人公の復帰で再び威力を取り戻すでしょう。最近では、黒を身につけて挑むプレイヤーも多いような気がします。不敵に見えますよね。楽園モーリシャスの日曜日には鮮やかな青や光沢のあるヴァイオレットも見られましたが、勝った南アフリカのディラン・フリテッリのいでたちは、ベイビーブルーのシャツに白いパンツ。白いキャップに白いシューズに白いスリーブ。顔も日焼け止めで白く塗り込んで黒いサングラス。それもスポーツタイプではなく昔のギャング映画でよく見るようなヤツです。
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全英では赤も着ていたし、トルコや香港では濃いめのグレーやくすんだ青も着ていましたが、初優勝を遂げた6月のオーストリアでも最終日は水色に白でした。勝負のかかった日にフリテッリの選んだのは、まるでアトワルの眺めていた水平線近くの色。追いかけるプレイヤーが前の組をいくというゴルフならではの構図もあって、フリテッリはモーリシャスの空と白い雲に同化して、気迫どころか気配も消してアトワルに忍び寄り、最後に勝ち抜きました。
プレイオフホールとなったパーファイブの18番ホールでは長大なティーショットを放ち、2打目地点でコンパスを取り出して、しゃがんで地面に置いて風向きを把握していました。そうだ、この日は6番で若木の根元にある球を打ってアイアンを一本折ってしまっていました。フェアウエイに出すだけにしては長いアイアンだったのは、その先使う場面はないという計算だったでしょう。13本で戦い、風向き把握にコンパス使用。感情の表れやすい目元を隠す黒いグラサンが、プレイオフでは逆に存在感を強調。ただ者ではないと感じさせた頃には、勝負はついてしまいました。
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*三日目は雲色のフリテッリ
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*川村昌弘選手が3年連続出場。今回は22位タイでした。