ゴルフには二通りのメンタリティーがあるようだ。ラウンド合計打数を競うストローク戦であっても、リーダーボードをにらみながらマッチプレイのようにつねに他の競技者を意識して次打の意思決定をする者がいる。一方で、優勝争いの状況には眼もくれず、コースを相手に自分のゲームプランを固守してチャンピオンとなる者もいる。
後者はいわばレッセ・フェールともいうべきスタイルで、2008年のマスターズに勝ったトレバー・イメルマンがその典型だ。目の前の一打に集中するために、最終ホールまで自分の順位を知らずにプレイしていたということだ。
他のプレイヤーの動静を知ったばかりに、安心したり心配したりして集中力を欠く、ということもあるだろう。 成功の確率の低いショットや、無謀な一打に挑む気持ちを抑えるため、あるいは、臆病にならずに果敢に攻めるためであるかもしれない。でも、勝ちたいから出ている試合で、心の動きがショットに影響しないように、他者のスコアで攻め方を変えないように、という目的でリーダーボードを見ない、というのはどこか頼りない。
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事前のシナリオ通りにプレイできて負けてしまっても、悔しくないと言い切れるのか。1994年の全英オープンでのJ・パーネビックのように、追いかけてくる選手との差を把握しなかったために優勝を逃した例もある。
フィールドの百数十人が4日間、最初から最後まで自分だけのゴルフをするのを理想としていたりしたら、プロゴルフはインターネット上で遊ぶゲームのように、共有するものが希薄になりはしないか。逃避的とは言わないまでも、なんだか自分の繭のなかで現実をやり過ごそうという弱さを感じる。
いや、私のようなダファー(へぼゴルファー)には、トッププロたちの心境がわからないだけだろうが、少なくとも、友人たちとプレイする週末を心待ちにしている多くのアマチュアにとって、ゴルフは時間と距離を共有するゲーム。鼻息を荒くして相手に勝ろうとするマッチプレイ・メンタリティーの方が楽しいはずだとは思う。
(2010年10月28日毎日新聞夕刊掲載)