タイガーバブルの終焉

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先週の全米プロゴルフ(米国PGA)選手権は、メジャーとして初めて賞金総額が1000万ドルの大台に乗った。優勝したローリー・マクロイが手にしたのは180万ドル、約1億8400万円。ちなみにテニスのウィンブルドンが総額4220万ドル、シングルスの優勝者には男女ともに円にして約3億。来月の全米オープンでも同額が用意されるからゴルフはまだ安いと言える。この差の解釈はここでは措くとして、メディアの中のゴルフが右肩上がりに商品価値を高めてきたことは確かだ。ただ、主催者である米国PGA(プロフェショナル・ゴルファーズ協会)は死活問題を抱えている。

世界に冠たるゴルフ大国アメリカでは、一般のゴルフ参加が5年連続の減少。コースの閉鎖数は新設数を8年連続で上回っている。用品販売の落ち込みはまだ底を打っていないとして、全米最大手のスポーツ用品小売店は先々週、ゴルフの店頭アドバイザーとして雇用していた500人以上のPGAプロを解雇した。ゴルフ指導やクラブ運営などを生業とする約2万7000人のプロで構成される米国PGAにとっては、メディアゴルフの華やかさとは裏腹に、深刻な事態が続いているのである。

全米のゴルファー総数は2500万人ほどで大きな変化はないが、総じて30歳代前半までの若年ゴルファーのプレイ回数は減っており、その傾向には所得の大小と有為な関係がみられる。個人の資産管理やライフスタイルを扱う米国の月刊誌『マネー』は、ゴルフにはお金と時間がかかること、子どもが参加しにくいこと、ゴルフは難しすぎることを要因としてあげた。ゴルフ自体の魅力の問題となると、アメリカだけの事情とはいえまい。

マネー誌の考察で興味深いのは、つまるところゴルフ人気の自然な浮き沈みではないかと示唆している点だ。タイガー・ウッズの登場とともに盛り上がった特需がしぼんできただけのこと。ウッズも今年39歳。不倫スキャンダルと相次ぐケガも作用して、90年代末から人々にもたらしてきたゴルフ熱、いわば「タイガーバブル」が終わりかけているというわけである。

メディアはすでに新たな超越的ヒーローとして、全英オープンに続く破竹の連勝でメジャー4勝めを遂げた25歳のマクロイに期待を寄せているが、さて、われわれ週末ゴルファーの何かが変わるのか、楽しみではある。

(2014年8月14日付毎日新聞夕刊掲載)

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