パッティングの成功率を音楽が上げるという実験結果が、ジャーナル・オブ・アスレティック・エンハンスメントの2014年8月号に発表された。ニューヨークにあるクラークソン大学のアリ・ブラーニ講師を中心に行われている研究で、クラシック、カントリー、ジャズ、ヒップホップ/ラップを聞きながらのパッティングでは、何も聞かないで黙々とやるよりもパットを決める割合が統計学的に有意に高くなることが明らかになり、ロックでもその傾向が示された。ジャンル別で分析すると最も効果的だったのはジャズだった。
実験に参加したのは強豪大学ゴルフ部員でゴルフ歴8年以上の男女計22名。1.5mから20回パットしてホールアウトできた回数を記録した。グリーン上でホール周りの4カ所を予め定めておいて一カ所から5回ずつパットした。実験前には同じグリーンの違う場所でタッチを掴んでもらった上で、上述の5種類の音楽を聴きながらのパッティングと、何も聴かない場合の合計6度の試行を、順序は指定せずに自由に選んで行ってもらった。その結果、何も聴かない場合にホールアウトできた回数は平均14回だったが、音楽を聴きながらではそれを上回り、とくにジャズでは17回となった。結果に男女差は出なかった。
音楽が、スポーツの場面でやる気を起こさせ、積極的な取り組みを促し、疲労感を軽減させるなど心理的、生理的作用をもたらすことを検証した研究は多い。野球のバッティングやバスケットボールのシュート、あるいは陸上競技などで、アップビートの音楽がパフォーマンスを向上させたという報告もある。うなずける話だ。リズムやテンポとの関連を感じさせる。一方で、音楽は集中力をそぎ、注意を散漫にするので逆効果だという報告もある。
ちなみに、今回の実験で参加者がiPodからヘッドフォンで聞いた音楽はクラシックがベートーベンの交響曲第5番。カントリーはレイディーアンテベラムとリトルビッグタウン、そしてジェイスン・アルディーン。ジャズはルイ・アームストロング、シャーデイ、ノラ・ジョーンズ。ロックはシャインダウン、スリードアーズダウン、パラモア。ヒップホップはアッシャー、そしてラップのエミネムとリル・ウエイン。
私なら『ロリポップ』なんて聴きながらではとても打てないし、被検者が平均20.3歳の大学生たちである、ということも考えさせる。音楽にパットを決めさせる効果があるからといって実際のプレイ中に聴くのはルール違反で、競技なら即時失格だが、悩ましいパッティングの秘密を解明する糸口がそこにあるかもしれない。この研究グループはこれからもっと対象を増やしてさらに実験を進めると言っているので期待しつつ、とりあえず今度の週末は、頭の中でコルトレーンでも鳴らしながらパットしてみよう。
(月刊ゴルフダイジェスト誌2015年2月号掲載)
*:米PGAツアーの平均では1ラウンドの打数の43%がパッティングによる。欧州ツアーでは41.5%だ。うまくなればなるほどゴルフはパットの勝負である。