ゴルフにはメジャーと呼ばれる四試合がある。四月のマスターズ、六月の全米オープン、七月の全英オープン、そして八月の全米プロ選手権。競技ゴルフの頂点であり、勝者はゴルフ史に残る名声を獲得する。もちろん、高額賞金に加え世界ランキングの最高得点、以後のメジャーと主要ツアーの出場権が与えられる。こうした制度的な位置づけから、これら四大会は別格なのだが、国際テニス連盟が一九二三年に全仏、ウインブルドン、全米、全豪をメジャーと定めたテニスと違って、ゴルフでは事実上、そうなっているに過ぎない。
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競技レベルを軸にプロを頂点とする現在のようなピラミッド構造に至る以前の主要大会は、全英オープン、全英アマチュア、全米オープン、全米アマチュアだった。一九三〇年にボビー・ジョーンズがその四つすべてを勝ったことは空前絶後の四連勝と讃えられ、個々の大会の格も極まったが、文字通りその時代のクライマックスであり幕引きとなった。
引退したジョーンズが一九三四年に創設したマスターズがメジャーになったのは、バイロン・ネルソンがベン・ホーガンを下した四二年とも言われる。しかし、世界ゴルフ殿堂入り記者のHW・ウインドはサム・スニードがホーガンを破った五四年のことだと書いた。全米プロは一九一六年に始まり、五八年にマッチプレイからストローク戦になったが、英高級紙デイリーテレグラフの四七年の記事には、米国のメジャーは全米とマスターズだとある。当時、少なくとも英国ではメジャーと捉えられていなかったことがわかる。
ゴルフ発祥のリンクスで連綿と続けられる全英オープン、スポーツとしての範型をつくってきた全米オープン、球聖ジョーンズのマスターズ、産業としてのゴルフを担ってきた全米プロ。個々の試合には歴史と物語があるが、グローバル化し五輪種目にゴルフが復活するこれからの時代に、いつまでもメジャーでいられるだろうか。
ジョーンズ自身はテレビとコマーシャリズムの作り上げる幻想にいささか辟易していたようで、一九六七年に、全米オープンと全英オープンだけで十分ではないかと書いている。すでに賞金総額ならメジャーを上回る試合が四つある。より実質的で色あせない価値とは何なのだろうか。
(2012年5月17日付毎日新聞夕刊掲載)