ツアーキャディーという専門職

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バレンタインデーの週の欧州ツアーアフリカオープンで、逆転優勝を遂げた地元トーマス・エイケンのキャディーは新婚のケイティー夫人だった。昨年末のタイでの最終戦でもセルジオ・ガルシアが、ガールフレンドにバッグを託すや一年ぶりの勝利を掴んだ。むくつけき男たちの戦いの場にあって、彼女たちが仕事をこなす姿は清々しくさえ感じられたが、キャディーの役割とは何だろうと改めて考えさせられた。

「ショーアップ、キープアップ&シャラップ(時間通りに来て、プレイヤーに遅れず離れずついて回り、余計なことをしゃべらない)」

 

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セベ・バレステロス、サンディー・ライルのバッグを担いで彼らを全英オープン勝利に導いたデイブ・マズグローブは仕事の勘所を問われてそう答えた。一昔前のスコットランドのキャディーと言えば着の身着のままパブにたむろしては酔いどれ、寝過して約束の時間に現れないことも珍しくなかったから、ニヤリとさせられる。もっとも、プレイヤーにとって武器になるという意味で「キャディーは15本目のクラブ」とも言われてきたし、1995年の全米プロ選手権で勝ったスティーブ・エルキントンが賞金の半分をキャディーのデイブ・レンウィックに手渡した逸話は、いかにその貢献が大きいかを物語る。

 

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規則上、プレイヤーにアドバイスできる唯一の存在がキャディーだ。正確な距離、風、クラブ選択について進言するには、ルールに精通し、コースを熟知し、事前にプレイヤーの能力やミスの傾向を把握していなければならない。プレイヤーが意気消沈すれば元気づけ、勇み立ちすぎるなら落ち着かせて実力を発揮できるよう働きかけるとなれば、裏付けにゴルフの歴史や偉人たちについての幅広い知識もあって然り。あるいは、こわもてのボディーガード的要素すら求められるかもしれないし、コースの起伏や天候を思えば何より体力が物を言う。旅から旅の生活が苦にならないことも前提条件だ。

キャディーがクラブハウスに入れなかった時代はそれほど昔のことではない。欧州では90年代に組織化が図られ待遇改善が目指されてきた。個人的な営みでは限界もあろうことは想像に難くない。昨秋、アメリカでもプロツアーキャディー協会が設立された。五輪ゴルフ復活を前に専門職としての教育、養成制度の方も考え始めておくべきかもしれない。

(2014年2月27日付毎日新聞夕刊掲載)

 

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