スコットランドにはゴルフの血脈がある。ルールを確立し、世界各地にコースを造って技術を教えたのも彼の国の人たちだ。
ツアープロ輩出力は世界一である。男子6大ツアーでの戦績から算定される世界ランキングを有するプレイヤーは、12月最終週で33名。実数では米国が断トツの401名、日本は103人だが、515万弱という人口比で見れば、ゴルフ強国オーストラリア、スウェーデンを上回る。しかし、このところ100位以内に誰もいない。
危機感は、まず底辺拡大策につながった。6年めを迎えた“クラブゴルフ”と呼ばれる施策は、小学校で教師が子どもにゴルフを教え、そこから地域のクラブに引き継いでいくというもの。今年は対象である5年生の7割にあたる約4万人が参加した。
「ゴルフはわれわれの文化、アイデンティティー、そして経済のたいへん重要な部分である」と、ショーナ・ロビソン・スポーツ担当相は言う。そのプライドは振興諸策への年間100万ポンド(約1億5200万円)を超える助成金に反映されている。人口比からの単純計算だが、この額は人口が24.8倍の日本での36億円に相当する。
Embed from Getty Images
スコットランド・ゴルフ同盟による競技力向上策も相俟って、アマチュアはすでにこの3年間に成果を見た。男子全米選手権で108年ぶりにスコットランド選手が優勝し、女子の米国との対抗戦では英国・アイルランド連合の半数をスコットランド選手が占めた。そして男子は去年、世界アマ国別対抗戦で初の優勝を果たしている。
アマの成功はプロの低迷を一層、浮き立たせることにもなった。ゴルフ同盟はトップアマのプロ転向支援に積極的になっている。たとえば、欧州ツアーの年間出場権を得るための予選会は、エントリーに1,350ポンド(約20万円)がかかるが、有望選手の費用を同盟が負担する。ただ、同盟の予算は加盟クラブの会員の年会費と政府からの助成金であることから、批判も噴出し賛否両論、喧々囂々である。
プロ育成に税金投入すれば、その国のゴルフは強くなるのか。世界ランキング上位者の数は、一般ゴルファーの幸せを反映するのか。ゴルファー羨望のリンクスが身近にある国の悩みは、日本と違う次元にあるかもしれない。
(2009年12月24日付毎日新聞夕刊掲載)