ゴルフはまだこれからという大陸で南アフリカ共和国だけは別格。約450コースがあって歴史も古く、偉大なチャンピオンたちを輩出してきたが、真のゴルフ強国を目指す歩みは始まったばかりだ。
アパルトヘイト(人種隔離)政策撤廃からおよそ20年。人口の一割にも満たない白人の富裕層が独占してきたゲームに、国民の誰もが参加できるようにするための努力が続いている。10年前に発足した南アフリカ・ゴルフ振興協議会(SAGDB)は「ゴルフを育て、国を築く」を標語に掲げ、かつてゴルフに接する権利を奪われていた地域の人々に参加機会を提供する施策を担ってきた。
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週2回、授業を終えた子どもたちを学校へ迎えに行く。指導者には地域の実情と言語を把握している地元出身者が選ばれる。ゴルフはそれだけで喜びに満ちた活動だが、街の通りにたむろして、ただ無為に時間を過ごすことでは得られない経験となる。子どもたちが学ぶのは、ゴルフ固有の倫理観、価値観とともに、自分の夢を実現させていくための生活上のスキルだ。そして、自分のコミュニティーにいるときの彼らは、模範的存在となっていく。
対象は7歳から18歳、これまで1万7千人が参加してきた。才能が見いだされた者は週3、4回の指導と月に1度の練習ラウンド、さらに競技志向プログラムへと移行する。参加者の平均継続年数は5年。息の長い投資的活動こそ生涯にわたって維持される価値を生み、そこからは優れたビジネス人たちも出て、今度は彼らがゴルフ振興の力になってくれるという期待がある。
今後5年間の目標には新たにエリート養成も加えられた。資金調達はこれまで、ダンヒル、カルティエ等、多くの高級ブランドを傘下にもつリシュモン社のJ・ルパート会長の個人的熱意に支えられてきたが、政府の後押しを得て、プロ協会、国内プロツアーであるサンシャインツアー、公営宝くじ、ゴルフ産業、各ゴルフクラブの協同で進め、南アのスポーツ全体のモデルとなることが謳われている。
まだ地域格差の大きな南ア全土でゴルフへの参加を実現させることによって、誰もが誇れる国として一体感をもった南アフリカを築くというビジョンがそこにある。
(2011年1月20日付毎日新聞夕刊掲載)