“イブのいない楽園”はいまどき必要なのか?

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「なんだって?それは私に言わせればあまりにも馬鹿げた質問だと思うがね」

ふだんは冷徹な印象のR&AのCEO、ピーター・ドーソン氏が思わず気色ばんだ。今年7月、スポーツ界最古の競技会、全英オープン開催前日の記者会見場で、269年の歴史をもつ世界最古のゴルフクラブの男子限定会員制が槍玉に挙げられ、人種差別が引き合いに出されたときのことだ。「第一に、女性差別など存在しない。会員資格はそのクラブの自由裁量だし、いかなる差別とも別問題だ」というコメントに、苦渋がにじんでいた。

先立つ3週前、ゴルフ好きで名高いスコットランドのサーモンド首相は、開催コースのミュアフィールドを所有するオナラブルカンパニー・オブ・エディンバラゴルファーズがメンバーを男性に限っていることに反対を表明。「招待されたが今年は会場に行かない」と発表した。スコットランドは性差別を容認していると世界中に宣伝するようなものだという批判をかわす政治的判断だったが、くすぶっていた火種は燃え上がった。

全英オープンを持ち回りで開催するロイヤルトルーン、ロイヤルセントジョージズ、そしてR&Aの母体であるセントアンドルーズのロイヤル&エンシェントGCも男子限定クラブであり、全英女子オープンの開催コースにもなっている。対応を迫られた格好のドーソン氏が、時機をみて何らかの意思表示と取り組み方の説明をするつもりだと言った翌日、英国政府の文化、メディアおよびスポーツ担当大臣、マリア・ミラー氏も全英オープン出席を拒否し、キャメロン首相がそれを支持。野党労働党も同調して、「女性のスポーツが花開いている昨今、全英オープンには困りもの。ミュアフィールドは21世紀化せよ。いまや男性だけのクラブは禁止されるべき」と息巻いた。

 

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全英オープンを開催する男性限定クラブが非難される理由は、現代社会に男性優位の状況が根強くあるからだ。全英オープンは世界でもっとも影響力のある競技会であり、毎年の大きな利益の一部は国際的なゴルフ振興に充てられる。運営者が私的組織でも責任は世界規模であり、ゴルフそのものの一面を象徴する。そこに女性がいないのは、性差別があるからだと思われかねないしゴルフ全体のイメージを貶める、というわけだ。

去年、マスターズを開催するオーガスタナショナルGCが規約を変更してコンドリーザ・ライス元国務長官をメンバーに迎えたとき、アメリカの世論は、ゴルフの将来的な発展のために責任を担うべきクラブのあるべき姿だと喝采を送った。アメリカンデモクラシー的妥協だと私は感じたが、古いものを重視するイギリスの場合はどうなるだろう。そもそも、女性を排除することの意味がいまでもあるのかどうか。本当に男だけの方が楽しいのかどうか。現実的な焦点は性差別でも、結社の自由でもなく、伝統に固執する態度なのか。英国紳士の本音が聞きたい。

(2013年10月豪月刊ゴルフダイジェスト誌掲載)

 

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