アイルランドが親しみを感じさせるのは、音楽や文学のおかげだろうか。 ゴルファーなら、北海道を少し大きくしただけのあの島に世界的に名高いコースや無名のリンクスがあって、420を数えることに惹かれるかもしれない。先頃、世界ゴルフ殿堂入りしたクリスティー・オコナーや、全英オープンを連覇したパドレグ・ハリントンを生んだ国だということに敬意を抱くかもしれない。
あるいは、彼の国の人々が小さい頃からゴルフに親しみ、夏の長い一日には仕事の後に仲間とラウンドして、ギネスをおごったりおごられたりして一日を終えるのだろうと、憧れをもってイメージできるからかもしれない。そして我々は、いつか、まとまった休みをとって、アイルランドでゴルフをしてみたいと願うのだ。
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アイルランド政府はそうした我々の気持ちを真剣に考えている。とくに注目すべきは、駆け出しの若手ツアープロへの経済援助だ。
観光スポーツ・レクリエーション省は1999年、国際舞台を目指そうという男女新人プロゴルファーの支援を目的として、ティーム・アイルランド・ゴルフ・トラストという信託組織を設立した。今年は18名のプロに合計23万1千ユーロ(約3,175万円)が供与されている。うち5人は最高額2万ユーロ(約300万円)を受け、それを資金に欧州ツアーで戦っている。過去10年間の累積供与額は230万ユーロ(約3億2千万円)に及ぶ。
加えて、ゴルフ同盟や国の運営する諸施設で、コーチング、体力向上、ケガの予防・治療とリハビリテーション、栄養管理、メンタル・トレーニングのサービス・ネットワークに、無償でアクセスできるよう便宜が図られる。
世界トップレベルのゴルファーを輩出することは、その国のゴルフ振興のために大きな作用を及ぼす。それはゴルフというスポーツ文化の継承、存続のためにも重要である。彼らを生み出すその国の制度は国際的に評価され、世界のゴルファーが注目することで、ゴルフを主目的とした観光旅行(ゴルフ・ツーリズム)の目的地としての評判も高まる。アイルランドの魅力は、プロ育成への税金投入によって裏打ちされているのである。
(2009年11月26日付毎日新聞夕刊掲載)
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