今年1月、中東アブダビでの欧ツアー公式戦三日目。ローリー・マクロイは首位で上がったかに見えたが2打罰が判明。それもスタートして間もない2番パー5で修理地扱いの観客横断路からドロップ後、左足が白線にかかっていたのに3打目を打ってしまった。自覚のないままプレイは進行し、最終ホールで4つめのバーディーを決めた後で同伴競技者リカルド・ゴンザレスのキャディー、デイブ・レンウィックから「ルール委員に相談した方がいい」と問われた。現場に赴いて確認したマクロイは2番をダブルボギーとしてスコアカードを提出した。
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直後のインタビューでは憤懣あらわ。救済措置のはずがかえって深い逆目のラフに入ってしまい、その不条理さを飲み込んでなんとかパーにしたというのがマクロイの認識。「ゴルフには馬鹿馬鹿しいルールがたくさんあるが、これもその一つだ」と締めくくった。事は単なるうっかりミスなのだからこの発言は逆ギレに近い。ただ、前年はまさにこの試合でナイキ社と破格の契約を発表して華々しく一年を始めながら不振が続き、年末にようやく勝って手ごたえを得て、キャロライン・ウォズニアッキとの婚約も発表して迎えた振り出しの緒戦。さあ優勝へ向かおうという時の思わぬ落とし穴に、いらだちもあったことだろう。最終日、マクロイは奮闘したが、結局1打差の2位タイ。結果的に敗因となった2打罰にマクロイの素直さと未熟さが覗いた。
興味深いのは違反発覚が4時間後だったことだ。現場でレンウィックは40ヤード離れた位置にいて、マクロイが打とうとしていたので叫ぶわけにもいかなかったという。未然に防げなかったのはそれで理解できる。もちろん、見て見ぬふりという選択肢はないだろう。現場を目撃した他の誰かがマクロイのカード提出後に通報すれば失格になってしまう。
アルゼンチンのゴンザレスは多少の英語は話せるが、レンウィックが歴30年を超えるキャディーの感覚として自分が告げていいだろうと考えるのは不自然ではない。ラウンド終了時を選んだのは混乱や動揺を嫌ってのことだと、レンウィックは言った。これに対しては、違反はその場ですぐに指摘すべきだという声が他のキャディーたちから聞かれた。違反の処理についてキャディーは斟酌すべきでないという考え方だ。おそらくはそれが、少なくとも半分は正しいだろう。違反を犯した者が受け容れなければならないのは現実であり、配慮は無用というのが正論だ。ただ、今回の件の後味は悪くない。ゴルフで求められる判断には規則や指導書に書かれないことも多い。思いやりは仇になる危険をはらんでいても、当事者の判断と行動を尊重することを前提にするのは楽しみを増す、とはいえまいか。
最終日の朝、レンウィックは「善意からのことだったと、わかってもらえると信じている」と記した短い手紙をマクロイのロッカーに置いた。マクロイは理解しているとコメントし、それを聞いた61歳のデイブ・レンウィックは喜んだ。24歳のローリー・マクロイは教訓を得て一日で成長しただろう。
(2014年5月号月刊ゴルフダイジェスト誌掲載)
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