「毎日、何リットルも飲んでましたからね。暑いところでの試合でもコースにもち込んで。欠かせなかったのです」
アイルランド出身で今年40歳になるピーター・ローリーは温厚な人柄に細身長身。アスリートというより、白いシャツの袖に腕抜きをして会社の経理課で働いていそうなタイプだ。2008年のスペインオープンで地元のヒーローに競り勝った初優勝は見事だったが、スコットランドの全英覇者ポール・ローリーと同じ名字なので、私は試合中継で「ダブリン市役所勤務のローリーさん」と親しみを込めて呼んでいた。欧州ツアー新人賞に輝いた2003年のデビュー以来12年間、レギュラーとして安定した成績を維持し、いつもそこにいてくれるような存在だったのだ。その彼が、2013年の夏から不振に見舞われて年間出場権を失った。
「依存です。中毒ですよ。だからやめようとしたのです」
2013年半ば、フィットネスに真剣に取り組み始めた。その一貫として彼がやめたのはコーラだった。冷やされている上に炭酸のせいで、それほど強い甘さを感じないが、コーラには重さの10%強の砂糖が含まれている。350ml缶なら35g強。角砂糖(3〜4g)にして10個分相当だ。砂糖の一日あたり摂取量の目安はWHO(世界保険機関)のガイドラインでは25gまでとなっている。
「砂糖漬けのような状態から、いきなり砂糖をゼロにしたわけです」
それまではガブ飲みだったというから、体内ではドッと分泌されたインスリンや反動のアドレナリンで、毎日、嵐が吹き荒れていたことだろう。その状態でゴルフをして好成績だったことの方が驚きだが、いざコーラをきっぱりやめてみると、結果としてゴルフがダメになった。それまで嵐の中を巡航していた飛行機が、一転、穏やかな空を飛ぶことになった途端に急降下し始めた、という感じか。
「皆さんは驚くでしょうけど、私は完全に自信を失ってしまった。精神的に破綻したとまでは言いませんが、かなり情緒不安定で、状況に対処していくことができなかった。(コーラとの)関係は私にはわかりませんけどね」
2013年、コーラ断ちを始める3週間前のアイリッシュオープンで10位に入ったのを最後に上位入賞がないどころか、去年は8試合連続カット落ちで終了。
「この凋落ぶりですから、なんでこんなことになったのかって考えてね、あらゆることを見直さざるを得ませんでした」
そして、ピーター・ローリーはまたコーラを飲み始めた。ただ一日2、3缶に制限しているという。2015年はスポンサー招待を頼っての出場だが、週末に進めるようになり、2月のマレーシアオープンでは16位、インドオープンでは31位でまずまずの賞金を獲得した。
「コーラ断ちはうまく行かなかったのです。私の脳にどんな作用があったのかわかりませんけど、その間の私は、同じピーター・ローリーではなかったのです」
(月刊ゴルフダイジェスト誌2015年5月号掲載)
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