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タイガー・ウッズの豪邸のあるエリアから道を下った近所に住む私は、彼の不倫スキャンダルのおかげでひどくシニカルになっている自分に苦笑いしながら年を越した。そもそも私がゴルフ専門TV局のコメンテーターとして渡米して来たきっかけは、2000年の彼の全米、全英オープン超越的制覇の生中継で、以来ずっと讃え続けていたのだから少しばかり嘆きたくもなる。
ゴルフ史に残る偉業を達成した、その努力の激烈さの反動なのか。タイガーの精神に脆弱な部分があり、現実がぼやけて判断力を失ったのなら、生活とゴルフの乖離が生んだ悲劇といえなくもない。失墜したイメージの経済損失は甚大であり、アメリカはいま国をあげて、納得できる解釈と善後策を探している。
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傷つけられた家族のことを考えると胸が痛む。この先彼が復帰して、これまで通り強ければなんとかなってしまうという展開はぞっとしない。もし勝ったとしても、あのかわいらしいふたりの子どもたちがグリーンに駆け寄ることはできないなんて、勝利を目指す意味があると思えない。こういう感傷的な想像が何か力強い現実的な決意と行動で克服されることを祈るばかりだ。
ゴルファーなら道徳をわきまえた立派な人間であって欲しい。でもわれわれの身近にも、渋滞する高速の路肩を走ってコースへ行き、スロープレイで後続を待たせ続け、タバコの吸い殻をバンカーにねじ込むような不埒な輩はいるし、分別をなくした官僚の接待ゴルフ三昧事件もあった。やる人の人格や品性とは無関係で、清濁あわせ呑むのがゴルフなのだ。
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他人を思いやり、自分を欺けない者は、ゴルフの作法や思想に普遍性を見出すかもしれない。それを大切に思う人が多いことを心から願う。ゴルフからの解放を必要とするのがプロの世界なら同情するが、我々にとってゴルフはただの遊びであり生き甲斐だ。信じた価値を守り、自分の生活の流儀として貫くタフなゴルファーにはなれる。
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(2010年1月21日付毎日新聞夕刊掲載)