2011年5月第2週、地中海に浮かぶマヨルカ島での欧州ツアー、イベルドローラ・オープンのプロアマ戦に、マニュエル・デ・ロ・サントが出場していた。
ドミニカ出身パリ在住の27歳。彼には左脚がない。野球選手として将来を嘱望され、トロント・ブルージェイズ入りも決まりかけていた18歳の時、単車の事故で左脚のほとんどを失った。夢を断たれた喪失感の中で、妻のエレーナさんとともにフランスへ移住してリハビリを続けていた彼は、ある晩、二人で映画を見た。タイトルは『バガー・ヴァンスの伝説』。翌朝、彼は近隣の練習場に行き、ベースボール・グリップで4発打って手応えを感じたという。
義足を外した方がうまく打てた。野球で磨き上げた平衡感覚が物を言った。7鉄で夕暮れまで球を打ち続けた。感動した練習場経営者が無料にしてくれた。4年でHCは3になり、障害者の試合に出て勝利を重ね、後援企業もついた。
「自分の身体の一部を失うという現実に向き合うのはとても厳しいことだし、ハイレベルの競技に参加できるスポーツを探すのは困難です。私に脚が2本ともあったら、片足だけでプレイするなんて不可能だと考えたでしょう」
自分の経験が誰かの励みになるなら幸せだと言う彼は、プロとして健常者と同じ土俵で戦うことを目指している。
「私と同じような問題をもつ人がいたら、たとえどんなことが起きようとも前に進むしかないんだよと言うと思う。」
静かな迫力に満ちた上体の捻りから、ドライバーは260ヤード飛ばす。切り返しからインパクトまでのバランス。右足で回転するフォロースルー。滑らかに制御された動きの余韻を残す自然なフィニッシュは、まるで一枚の絵のようだ。
バガー・ヴァンスは架空の存在だが、私はヴァンスが静かな夜のコースで語ったこと、「誰もが自分本来のスウィングをもっていて、それはその者が存在する以前からそこにある」という件を思い返した。デ・ロ・サントのスウィングが凄いと感じられるのは、現世では片脚でスウィングをする彼の真の姿に気づくからなのだろうか。私は神秘主義者ではないし、宿命論も信じない。しかし、現実を嘆いているだけでは幸せにはなれないという彼の言葉は、救いのように響く。
「何か自分が気分よくなれるものを探そう。それがあれば不可能が可能になる」
「ゴルフはそれだけで一つの大きなファミリーのようなもので、世界中のどこへ行っても、そこにいる誰かと一緒にプレイできる。私たちは決してひとりぼっちにはならないのです。」
この日は、彼も会って話をしたことがあったというセベ・バレステロスの葬儀があり、逆境でこそ全力を尽くすセベのゴルフを誰もが思っていた。懸命に練習しなければダメだと、セベは初対面の彼に言ったという。デ・ロ・サントの中にもセベのスピリットが生きている。
(2011年8月号、月刊ゴルフダイジェスト誌掲載)
Embed from Getty Images「気分よくなれるものなら、不可能が可能になる」
—マニュエル・デ・ロ・サント
“Try to find something that makes you feel good.
When you feel good all impossible become possible.
Just believe.” —Manuel De Los Santos