「セベは死なないんだよ」

欧州ゴルフの立役者たるセベリヤーノ・バレステロスが、今月七日(2011年5月)に他界した。54歳という若さだった。2008年秋にマドリード空港で倒れて脳腫瘍と診断され、4度の手術を受けて病魔と戦ってきたが、力尽きてしまった。

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スペイン北部の港町ペドレーニャで生まれ、74年、17歳の誕生日を前にプロ入りして以来、全英オープン3勝、マスターズ2勝、欧ツアーで50勝をあげて賞金王6度。欧米対抗戦ライダーカップでの活躍を始め、欧州が米国を凌駕する時代の先陣を切った。20歳で来日して日本オープンに勝ち、翌年に連覇を遂げたのも衝撃的だった。

我々はセベをアーノルド・パーマーに、ペレに、アイルトン・セナ、モハメド・アリ、あるいはエルビス・プレスリーに喩えてみせられるかもしれない。カリスマやパッションというものは説明するのが難しいのだとしたら、答えはセベだ。セベはゴルフがすごく好きだったのだ。それが彼の情熱と献身の原動力であり、我々が憧れる理由にもなった。

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ゴルフというゲームでは、思惑通りに行かなくても、そこから何が出来るのかが勝負を決するものだということを、あらためて印象づけたのがバレステロスだった。逆境で見せる闘志と集中力、神がかりとも思えるようなリカバリー・ショットを我々は讃えた。不撓不屈、乾坤一擲、そしてそのもとにあるパッションの意味を我々はセベに見いだし、アマチュアもプロも、そしてゴルファーのみならず世界のアスリートたちがインスピレーションを得た。

化学療法で体力を失っていく中、「悲しんでくれる人もいるだろうが、私自身はとてもハッピーで、自分がいかに幸運だったかと思ってる。だからかわいそうだとは思わないで欲しい」と語った。

「人生はスポーツみたいなもので、毎日が戦いの連続。大事なのはネバー・ギブアップなんだ」

亡くなった先週末、折しも欧ツアーは彼が3勝しているスペイン・オープンだった。

「セベが成し遂げた全てのことを見つめ直して、自分たちにとっての、その意味を確かめなくてはならない。セベは、死なない」

最終日を迎える前の晩にそう言った南アのトーマス・エイケンが優勝した。プロたちにとってもヒーローだったセベが、これから皆を強くしていくだろう。

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(2011年5月12日付毎日新聞夕刊掲載)

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