2009年7月26日:SASマスターズ、バーシェベックG&CC、マルメ
Ricardo GONZALEZ(ARG); SAS Masters 26 Jul, 2009, Barsebäck G & CC, Malmö, Sweden
あのショットでは心臓が止まるかと思いました。木立の中にわずかな隙間があって、そこをめがけて打ちました。グリーンに上がっていくと、ギャラリーのみんなが迎えてくれた。あの温かい声援を、私は忘れることはないでしょう.本当に喜ばしい気持ちでした。
I almost had a heart attack at 18th with the approach shot. I saw a little gap between the trees and hit it. When I walked up to the green the crowd gave me a very warm welcome, and I will remeber that. It was a very nice feeling.
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高緯度のスウェーデンの、爽やかな夏の日。
国内唯一の欧ツアー公式戦で、人々が楽しみにしている、年に一度のビッグ・イベント。
日頃、アメリカに行っているヒーローたちもこぞって帰って来て、欧州の精鋭たちと覇を競う試合。
テレビで見ている我々も、画面に映る大きなギャラリーたちのなかに、まぶしいようなプラチナ・ブロンドを見つけるだけで、スウェーデンという小さな国の魅力に憧れと胸の高まりを覚えずにはいられない。
いや、それは別としても、華やかさと期待の中で今年19回目を迎えた大会は、南部マルメのバーシェベック(Barsebäck G&CC)での開催。コースは距離が伸ばされ、全長7,665ヤード、パー73。欧ツアー史上最長となっていた。
この長さのせいなのか、あるいは、59歳のトム・ワトソンの優勝争いで盛り上がった前週の全英オープンの余韻の、冷めやらぬせいなのか。大会は明るい日差しの中で、じつのところ、何かもの足らないような鈍い印象をはらんで進行した。
フィールドには、世界ランキング堂々7位のヘンリク・ステンソンがいたが、まったく振るわず、前年欧賞金王のロバート・カールソンが目の故障で不在。
米から大会2勝のイエスパー・パーネビックが今年も里帰り出場し、ディフェンディング・チャンピオンのピーター・ハンソン、ヨハン・エドフォース、ニクラス・ファストら、お国の個性的なプレイヤーはこぞって出ていたが、みな生彩を欠いていた。
代わって上位を争ったのは地元マルメ出身、在住の中堅、マーティン・エランドソン(アエランソン)とルーキーのオスカー・ヘニンソン。そしてお隣デンマークのイエッペ・フルアール、ウエールズのジェイミー・ドナルドソン、そして1打差首位で迎えた豪のマーカス・フレイザーだった。
フルアールは6月のウエールズ・オープンで初優勝を遂げていて、勝負が佳境に入れば強いところは証明済み。3打差のトップに立ってバックナインに入ったときには、そのまま勝ち抜けるのかに思われたが、ままならぬショットに連続ボギーが2度来て終わってしまった。
23歳のヘニンソンは、前年のQスクールを一次から勝ち上がってファイナルで優勝したツアー史上初のプレイヤーだ。今季はここまで成績を出していなかったが、モデルばりの容貌と思い詰めたようなプレイスタイルで声援を集めていた。
35歳のエランドソンはいかにも穏健な外見通りのプレイぶりだったが、結局、ヘニンソンとともに、ここぞというときにスコアを伸ばせずに終わった。
ドナルドソンは最終日に崩れるというこれまでの苦い経験を克服したかのようなバーディー攻勢で、この日21パット。最終から5組前を5アンダー68で回って、トータル8アンダーのクラブハウス・リーダーとなった。
フレイザーはこの日が31歳の誕生日。前回の優勝争いは08年末の地元メルボルンでの豪マスターズで、R・パンプリングにプレイオフの末に負けた。そのときは初めての子どもが生まれる直前で、心配事もあって完全に集中できなかった。息子のアーチー君も無事に生まれ、今回は絶好のお膳立てとなったが、77と崩れてしまった。
ゴンザレスは最終組の一つ前を回った。二日目に10アンダーに乗せて単独首位に立ちながら、三日目にはパットが決まらず77で5位に後退し、2打差を追いかける格好だった。
前半はじり貧の前日のような展開を思わせたが、9番でトラブルからバーディーに結びつけるや、パッティングも冴え始め、最後の6ホールで5つのバーディーをもぎ取って、あっというまに2打差をつけて優勝をさらった。
名に聞こえる飛ばし屋のゴンザレスは、2001年、2004年にドライビング・ディスタンス部門のNo.1になっている。今週の長いコースではその飛距離と、それを可能にする駆動力がものを言ったともいえるが、突き詰めれば精神力、あるいは信念、といったものが、勝負所で具現した、と言えるかもしれない。
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71ホール目、459ヤードあるパー4の17番ではバンカーショットを直接ホールアウトしてのバーディー。最終ホールではティーショットを左に大きく曲げ、林の中から3mもない間隙を狙って9番アイアンで乾坤一擲のアプローチを敢行。見事に2m弱につけ、万雷の拍手に迎えられた。
「今週はとてもいい感じだったんです。私はこのコースが気に入っていました。欧州でプレイするようになったのは20年前ですが、その最初の試合はここスウェーデンだったんです」
This week I had a very good feeling, it´s because I like it here. I have played in Europe for 20 years and Sweden was the first stop.
ゴンザレスにとってキャリア4勝目となった。自分を信じて前向きに取り組んで来たこの5年間がようやく報われた。今季はトップテンもなく賞金ランキングは153位に留まっていた。同世代の同胞、A・カブレラが2勝目のメジャーをものにするなかで、焦りもあったことは想像に難くない。
「きつい年になっていましたが、私は挫けずに、踏ん張って戦い続けました。もしも懸命に努力し、勝てるんだと信じる心を失わなければ、必ず実現するものなんだと、私は思っていました」
“It’s been a hard year, but I was fighting, fighting, fighting. I had the feeling that you can always make it if you work hard and never lose faith.
初日のリーダーで、週末をゴンザレスと回ったイングランドのリー・スラッタリーが金曜日に、明日はツアー指折りのナイスガイと回るので楽しみだと言っていた。
人柄はツアー仲間の認めるところだが、私は今週初めて、ゴンザレスがアルゼンチンに自分の農場を持っていて、そこは経済的に余裕のない10歳から15歳のこどものための教育センター、兼ゴルフ・アカデミーになっているということを知った。
“ハンディキャップ・セロ(Handicap Cero)”と名付けられているその農場は、ブエノスアイレスから南600kmほどのところにある。先週の全英オープンに、予選に破れて出られなかったゴンザレスは、そこで冬に備えて薪を割り、積み上げる仕事をして過ごしたという。
「トレーニングとリラックスの一石二鳥になりましたよ」
ゴルフを10歳から始めたゴンザレスが、自分のクラブを手に入れたのは14歳。これまで多くのアルゼンチンのプレイヤーがそうであったように、キャディーからプロになったという経歴だ。
「いまや、私は何かお返しをしたいんです。ゴルフの好きな子どもたちにね。だから基金をつくって、自分の農場の名前 ( Farm Handicap Cero)にちなんで“ハンディーキャップ・ゼロ”と名付けた。若いプレイヤーがさらに伸びるように、サポートしているんです。アルゼンチンにはかなりいい才能が出てきています。その一人は私の息子(サンティアゴ)でしてね、まだ11歳ですが、私は時々やられてしまうんですよ・・・」
Today I want to give back something to the young kids who like golf. So I have the foundation named after my farm, Farm Handicap Cero, that will try to help new players to get better. We have som really good talents in Argentina. One is my son, he´s only 11 but he beats me some times…
欧ツアーのアルゼンチン出身者は、勝つと同郷者に夕食をふるまうのが習いだそうで、日曜日のマルメの町ではキャディーたちも含め、陽気なスペイン語の飛び交う宴が張られたことだろう。プラチナ・ブロンドを期待していた当方は、髭もじゃのチャンピオンの鮮やかな勝ち抜け方に唖然としてしまったが、喜んでディナーをおごるよと言うゴンザレスの人のよさそうな笑顔には、何やら納得である。
それにしても、欧ツアー屈指の飛ばし屋が薪割りとは、なにやら昔の熱血スポ根ものの秘密特訓めいている。どうやらこのエピソードには皆、インパクトを受けたようだった。
ゴンザレスの先輩であるエドアルド・ロメロには“El Gato(猫)”、アンヘル・カブレラには“El Pato(あひる)”というニックネームがあるが、今回、ゴンザレスにも晴れて呼び名がついた、と欧ツアー公式ウエッブサイトでは伝えている。
“El Hombre del Hacha(エル・オンブレ・デラッチャ)”:The Axeman”、斧を使う人、ずばり、「木こり」である。
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資料:1)大会公式インタビュー・スクリプト
2)欧ツアー公式ウエッブサイト:www.europeantour.com
3)FINE FINISH GIVES GONZALEZ VICTORY: Mark Garrod, Press Association Sport Golf Correspondent, : http://www.sportinglife.com/golf/news/story_get.cgi?STORY_NAME=golf/09/07/26/GOLF_Malmo.html
SAS Masters, Barsebäck G & CC, Malmö, Sweden, 23 Jul 2009 – 26 Jul 2009
1 GONZALEZ Ricardo ARG -10 68 68 77 69 282 € 166660.00
2 DONALDSON Jamie WAL -8 71 72 73 68 284 € 111110.00
3 HULDAHL Jeppe DEN -6 72 70 70 74 286 € 62600.00
4 ERLANDSSON Martin SWE -4 70 70 72 76 288 € 32114.29
4 FRASER Marcus AUS -4 72 69 70 77 288 € 32114.29
4 HENNINGSSON Oskar SWE -4 70 72 73 73 288 € 32114.29
4 HIGLEY Marcus ENG -4 72 71 70 75 288 € 32114.29
4 OLESEN Jacob DEN -4 73 72 75 68 288 € 32114.29
4 SLATTERY Lee ENG -4 67 70 75 76 288 € 32114.29
4 SMITH Nathan USA -4 75 71 71 71 288 € 32114.29