必殺技に心躍る名前を

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「バンカーからチップイン!」と聞いてがっくりきた。条件次第ではありうる。しかし、その時は砂ごと打たれたのだ。

一言で言い切りたい気持ちはわかる。既存の言葉を代用、転用できる場合もあるだろうが、意味のすり替えや無視は受け入れ難い。問題は、バンカーからホールに放り込む快挙に固有の用語がないことで、われわれゴルファーはもっと積極的に命名しておくべきだ。

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ゴルフの一打には、すでに19世紀には定着していた由緒ある名称がある。目的別ならティーショット、レイアップ、アプローチ。これらは機能的に重なる部分もあり、使うクラブを問わない。

技術別に見れば、力をこめて球を叩くことをドライブと表現する例は17世紀の文献にある。パットが記録に現れるのは18世紀だが、もとより「そっと押す」という意味のスコットランド語だから、なれそめから用語になっていただろう。ホールまで近くなれば、高く上げるピッチや、低めに出すチップ。それらがホールアウトしてしまえばピッチイン、チップインとなる。

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バンカーからの打法は砂もろとも球をはじき出すエクスプロージョンショット。私は試合中継で「なんと、エクスプロージョン・イン!」と叫んでみたことがある。驚きと新展開への期待をこめて使ったが、フレーズとしては少し長いし語呂もいいとは言えないので、慣用されるには至らないのだろう。

 

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ロブはピッチの一技法でテニスやクリケットからの借用。大きなスイングで球をふわりと上げてポトリと落とすさまはパラシュートのようだ。

グリーン回りのあいまいな芝からアイアンクラブのリーディングエッジ(刃)で打つことはブレード。名前からして切れ味がいい。同じようなライからパターを金槌のように使って、トウ(先端)で釘を打つように寄せる打法もあるが、まだ呼び名はない。

最近では、距離のある目標地点へ突き刺すように鋭く飛ばすドライブがスティンガーと呼ばれ始め、パンチショットとノックダウンショットの違いさえわからないダファーの私は唸ってしまうばかり。

まだ命名されていない秘技、必殺技はたくさんありそうだ。かつて、低く出て行って途中から高く舞い上がる一打を「ヒバリ殺し」と呼んだような、聞くだけで心躍る名前がもっと欲しい。

(2013年8月8日付毎日新聞夕刊掲載)

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