パー5を2打目でホールアウトすることにアルバトロスの呼び名がついたのは、1921年の英米親善試合だったと故摂津茂和さんが書いている。アメリカのボビー・ジョーンズの離れ業に、破格の飛ばし屋で名高かったイギリスのシリル・トーリーが悔し紛れに命名したという。
信天翁(あほうどり)は北大西洋に生息していないのでイギリスやアメリカ東部のゴルファーは見たこともなかったはずだが、翼を広げると3mにもなり、羽ばたかずに長時間飛行できるこの鳥の名は、あり得ないようなスコアの名称としていかにもふさわしい。
鳥の名付け親がトーリーだというこの面白い逸話の裏付け資料を私はまだ見つけられないでいるが、ともかく、バーディーという呼称が20世紀になるかならないかの時期にアメリカで生み出されたおかげで、その上をいくイーグル、さらには幻のようなアルバトロスの呼び名ができたのは幸せなことだった。
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ところで、アルバトロスはアメリカでダブルイーグルと言われることも多い。アンダーパーの数字をはっきりさせたいなら、イーグルは“ダブルバーディー”、アルバトロスは“トリプルバーディー”でもよさそうなもの。喜びは2倍、ニギリの賞金も2倍になることから来ているのだろうかと推測したが、滅多に出る鳥ではない。まあ、テニスのポイントと同じで計算が合わななくたっていいのだが、問題は好ましくないスコアの方だ。
ボギーは19世紀末のイギリスで、上級者がそのホールを天気の悪くないときにミスなしでプレイしたときの妥当なスコアにつけられた名前だ。だからもともとは好ましいスコアのことなのに、アメリカがパーより1打多いスコアにおとしめてしまった。さらに悪いことに、パーより2打多いスコアをダブルボギー、3打多いならトリプルボギーと呼ぶ習慣もできあがり、ボギーのネガティブなイメージはますます確かなものになった。
元々、オバケという意味の言葉だし、濁音重ねでなんとなくダメそうな語感も作用しているに違いないが、私のようなダファーにはつらい。ボギー以降はいつまでもボギーでは夢も希望も救いもない。弱者に優しいニッポンゴルフとしてはこの際、独自に呼び方を変えてはどうだろう。ミスを重ねたスコアでも、敬意をもって受け入れられる固有の立派な呼称があれば、皆が楽しめる生涯ゴルフ時代の新しいあり方を演出できると思うのだ。
とりあえず私案。ダブルボギーはダボという略語を正式名称とする。水の底にいて泥を喰ってるような語感だから、しぶとく生きる感じが出るし、ダブルを英語っぽく発音しようとするとダボになるという偶然の利点もある。その点、トリプルボギーのトリは鳥、バーディーに通ずるから口惜しい。鳥がらみなら、いっそのこと開き直ってカモと呼ぶのはどうか。そこからはニギリに大きく響くスコアでもあることだし。そうなれば、パーより4打多いスコアは当然、ネギだ。
Embed from Getty Images(2013年1月号月刊ゴルフダイジェスト誌掲載)