ダイ・ハザード

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サイコロのゲームを意味する言葉が、ペルシャ、トルコあたりから古フランス語を経由して、英語のハザード(hazard)になった。偶然を願って何かを試みるのは危ないということなら、ずいぶん教訓めいた語源だ。

一般的語義は、健康や安全、計画を損なわせるもの。一八世紀からゴルフでも使われていて、いまではバンカーと池、小川などを指す。入れてしまえば夢も希望も打ち砕くのだから危険に違いないが、サイコロ遊びに由来するとならば、ダファーとしては少し救われる。ハザードの絡む一打は、一か八かでいいのだ。

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一九世紀までは、モグラが押し上げた土の畝やらウサギの巣穴、硬く鋭いとげを持つハリエニシダや灌木の深い茂み、丈高い草むら、排水溝、フェンス、小道、道路や鉄道の線路などもハザードの定義に含まれていた。ゴルフの育った彼の地のリンクスには、そういうものが当たり前に存在したということでもある。

手厚いコース整備が当然となり、それらはできるだけ排除されてきたわけだが、いろいろあった方が楽しそうにも思える。OBなら諦めるしかなくても、ハザードならそこから打ってもいいのがルールだ。それに、過保護にろくなことはない。

だからだろうか、ピート・ダイ設計のコースは魅力的だ。ポットバンカー、ブラインドホール、池に囲まれたグリーン。鉄道の枕木や、芝種を変えることでの視覚的な奥行きとテクスチャーの変化。それらは彼がかつてスコットランドで見て来た要素に他ならないが、われわれの想像力をいやおうなく刺激する。

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造成時の下水管の問題から生まれたウエイスト・バンカーも、裸地に近い区域をそのままインバウンズに残す手法の「発明」だった。それらのハザード的存在感が、いっそうフェアウエイやグリーンへの思いを募らせるのがダイ・デザインだ。

ゴルフでは小さな冒険もさせて欲しい。ハザードや、ラフとは異質の少し荒涼としたエリアに立つたびに、潜在的達成感はいや増していくのだ。

先月、世界ゴルフ殿堂の式典で、生涯功労部門での殿堂入りを果たしたダイ氏に会えた。あなたのハザードのファンですと告げると、「エンジョイ!」と笑ってくれた。

(2008年12月18日付毎日新聞夕刊掲載)

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2008年11月殿堂式典にてダイ氏と著者

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