ゴルフ・アニマル

球を遠くへ飛ばすこの遊びには、自在に空をゆく鳥がふさわしい。基準打数より1打少ないスコアをバーディーと呼べば、2打でイーグル、3打でアルバトロス(信天翁)と夢は膨らむ。

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飛球がお辞儀をするように落ちる打ち損じはダック。水面に浮かぶ鴨が頭をひょいと潜らせるさまからの連想だが、ミスに可愛らしい名をつけて慰め半分に呼ぶのは、ゴルフの慈悲深い知恵か。そういえば前世紀までの日本では、低く出て跳ね転がっていく脱兎の如きショットが出るとダットサンと唱えた。由来からして秀逸。車と一緒に世界に輸出しておくべきだった。

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ともあれ、動物たちで賑わうゴルフは楽しい。モグラ叩きやヒバリ殺しも辞さず、鳥の巣や馬の背やスネークに立ち向かう。一緒に回るのは羊の顔をした狼や、こちらの神経を徐々に苛む亀だったりするが、もちろん憧れは熟達の狩人、タイガー。元来、飛距離の出て強い競技者はそう呼ばれた。一方、草むらから茂みへと跳梁する初心者はラビットで、その未熟なイメージから、試合を求めて各地を転戦する駆け出しのプロを指すこともある。ならば自分はライオンだと開き直る向きもおられよう。わかりますよ、スコアはたいてい百獣の王、なんてね。

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ところで、ホール全体の形状は犬の後脚に喩えられ、右曲がりなら右ドッグレッグと言う。なぜ、犬なのかは不明だが、ゴルファーの友といえば煩悩の犬。欲を出しては失敗し、失意に怒りに八つ当たり。悟る気配はないとなれば、あれこれ名付けて笑いのめしながら、愛犬の頭をなでてやるべきか。

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「蛙の毛」とは意表をつく命名だ。グリーン周縁の、ラフより芝の刈高を低くした部分の俗称で、 「フロッグヘアほどの違いしかない」という米語の言い回しから来ているらしい。グリーンと大差ない区域ということになるが、でも、蛙には生えていないのだから、発祥は裸地だらけの手入れの悪いコースだったのではないのか。そう、この種の用語は、同伴競技者に投げかけたとき、一瞬、考えさせて、集中力を台無しにさせる、いや、余計な緊張を和らげてあげるという効果もあるので、みんなでもっと考え出して使おうではないか。

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(2009年7月9日付毎日新聞夕刊掲載)

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