ところで、ハザードという言葉は、どう発音されるだろう。ゴルフをしない人やニュース原稿を読むアナウンサーなら、長音の「ザ」を高くするだろうか。
聞き慣れない言葉やなじみの薄い語句は、後ろから三拍目までが高く発音される法則が日本語にはあると、社会言語学者の井上史雄氏が解説している。本来の音韻がどうあれ、外来語も一律に言いやすい抑揚にできるし、注意を引きやすい。
もとの英語では頭の「ハ」に強勢が来るのでそれを意識する人もいるかもしれないが、さて、ゴルフ仲間の会話ではどうだろう。
慣れ親しんだ言葉は平板化する、という現象も日本語にはあって、このことはいまに始まったわけではないらしい。「平板化された外来語は、その集団(または個人)にとって、親しい、当たり前の単語だと言うことを発音の上に示すことになる」と井上氏は指摘している。
なるほど、ウエッジ、ペナルティー、アプローチ、等々、ゴルファーが頻繁に使う用語を、われわれは会話の中で何気なく平板に言い流すことも多い気がする。平板発音で、その人の所属集団や関心の在り所がわかるなら、年季の入ったゴルファーは自ずと知れる、ということか。
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ゴルファー同士の会話なら、相手を選び、時と場合によって平板発音を使うということもあり得る。そこから仲間意識のありようがわかるとも言えそうだ。つまりゴルフ用語の発音次第で、その人のゴルフ愛好度や 日常性、あるいは、話し相手との関係、親しさがわかるわけだ。
言葉を自分たちのものにする、というのはこういうことなのかも知れない。英語を取り込むなら本来の意味や用法を大きく逸脱すべきでないとは思うが、発音については端から妥協しているのだし、平板化も幸せなゴルフ生活の反映となれば、こだわる必要はない。
いかにも玄人っぽいゴルフ会話を演出したければ、平板発音を多用すればいいことになるが、ドライバー、アイアン、パッティングなど、すでに一般に平板に言われる用語もある。ゴルフは誰にでも身近なスポーツになりつつあるのだ。私はテレビのトーナメント中継で、ひそかに平板発音を増やしてみようと企んでいる。
(2009年2月19日付毎日新聞夕刊掲載)
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