OBを知らないゴルファーはいないだろうが、OPはどうか。
ゴルフにはティータイムがあって、そこから始まる楽しい18ホールの所要時間は、経験値をふまえて想定できる。電車の時刻表のように各ホールアウト予定時刻を並べて、定刻通り進みたいところだが、遅れて前組との間隔がティータイムの間隔より開いてしまったり、後続組を待たせてしまうことがある。それがOPだ。
アウト・オブ・ポジション。頭文字をとってOP。逸脱遅延状態とでも仰々しい訳語をつけたほうが事の深刻さを感じ易いかもしれない。プレイの遅いがゆえのOPはルール第6条7項により2打罰。滞りない進行は努力目標でなくゴルフを成り立たせるための約束のひとつであって、遅延は罪だ。後続組に与える破壊的影響も考えれば、OBより高い代価は当然である。
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打球が意図せざる方向に飛び、ややこしいショットが増え、規則適用にもたつき、歩くのが緩慢なら時間はかかる。技術と知識と体力は基本問題だ。加えて、打つまでに必要な手続きの潔さが問われる。状況判断から意思決定までが長い上に、ルーティーンと称する一連の儀式が無頓着に延々と繰り返されるのは皆の不幸だ。
自律がゴルフ特有の美徳だが、自らにOPの科罰をした人の話を聞いた事はない。スロープレイは他者との関係で決まる、微妙で割り切れない現象だからである。競技なら各人の一打に要する時間を委員が計時して、元凶たるプレイヤーを特定する事になるが、われわれの普段のゴルフではグループ責任。注意を促しあってペースを速め、補い合って遅れを取り戻すしかない。
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同伴競技者を思いやり、他者を妨げないフェアの精神がスロープレイ規則の理念である。後続組を待たせている事が気にならないとしたら、ゴルファーとして重要な部分に意識が乏しいことになる。罪悪感は2打罰を甘受して結着させよう。後味の悪さを残してはゴルフが台無しになる。ゴルフで規則は救済のために存在するのだ。
ともあれ、ゴルフの定刻をタイムパーと呼ぶ。かのオールドマン・パーとは、われわれにとっては、このことだったかもしれない。
(2008年5月29日付毎日新聞夕刊掲載)