ゴースト・ストローク

ゴルフは打数を競うゲームなのに、実際には打っていないストローク数が含まれることになると悔しさは倍増する。ルール違反や、ボールを紛失したときなどの処置、ウォーターハザードに打ち込んだ場合の救済に際して付加される架空の打数、罰打;ペナルティー・ストロークだ。

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おおまかに言って、偶発的なルール違反は二打罰。故意なら失格なのだから、自分の不注意、不勉強の現れとして厳粛に受けとめなければならない。

一打罰は、下手、未熟、あるいは不運の単位だ。深い洞察と機知に富んだ著作で有名な英国のゴルフ作家、ピーター・ドブレイナーが、プライス(代価)とゴースト・ストローク(幽霊打数)の二つに分類しているのは面白い。

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たとえば、ブッシュに打ち込んでしまった場合。次に打ち易い場所まで打ち出すことすら困難なときには、一打の「出費」で救済処置をとることになる。バンカー内の水たまりに入ってしまったときは、バンカー内でフリー・ドロップ(無罰)ができるが、それが得策でないと判断されるなら、ボールを拾い上げて、拭いて、バンカー外へドロップする権利を一打で「買う」ことができる。これらが代価としての一打罰というわけだ。

一方、球の近くの小枝などを拾い上げた時に球が動いたとなると、即座に一打、ゴースト・ストロークとなる。グリーン上だったり、ラフに入った球の捜索中に図らずも動かしてしまった場合なら無罰だが、いずれにせよ動いたボールは元の位置に戻さなくてはならない。

空振りがゴースト・ストロークだというのはわかりやすい。さらに、打つつもりで構えたときに球が動いた場合も一打だ。気まぐれな風や幽霊を罵ろうにも、原因となることを自分がしたと見なされるなら、一打付加して球はリプレイスだ*。

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実打に対して空打とでも呼んで別勘定で競い合おうかと開き直りたくもなるが、ゴルフでも未必の故意に救いはない。ラフなどではとくに用心深い動作を心がけ、たとえばソールしないで打つことも技術のうち。確かな技量と警戒心に基づく慎重な行動があれば、代価の支払いもゴースト・ストローク数も減らせるわけだった。

(2008年7月24日付毎日新聞夕刊掲載)

*2012年規則改正で、明らかに風の仕業と分かる場合は、たとえアドレス後でも無罰でそのまま打つこととなっている。

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