心踊る5月のロンドン。欧州ツアーの本拠地ウエントワースでの伝統の一戦に今年もトッププレイヤーたちが集った。
「いまはゴルフに集中する。正直言ってとても困難だろうと思うけど・・・」
開幕前日、ローリー・マクロイは搾り出すように言った。その朝、婚約解消の声明を発表した直後の記者会見だった。つい前週末まで、キャロライン・ウォズニアッキとの幸せそうなストーリーが、当人たちのツイートも含めて盛んに取沙汰されていたのだ。二人が出会ったのは2011年。当時、ウォズニアッキはテニスの世界ランキング1位。発奮したマクロイは全米プロに勝って自らも世界一に登り詰めた。スーパーアスリート同士の仲睦まじい様子はそれぞれの試合会場で目撃され、彼ら自身、何かにつけ写真つきでつぶやいては楽しんでいる様子だった。去年末にプロポーズ。挙式の計画が進む中での、突然の破局。
Embed from Getty Images「問題は僕にある。週末に結婚式の招待状を発送したとき、自分にはまだ結婚というものに対する準備はできていないのだと気づいた。キャロラインには幸せになって欲しい。これまで素晴らしい時間を一緒にすごせたことを感謝してる」
あんなにも幸せそうだったのに、と嘆くような質問が出て会見場はさらに暗くなった。ある記者が「少なくとも、君は愛するゴルフコースへ戻ってきたね」と言って皆が笑った。このコースをマクロイが苦手にしているのは周知だったからだが、悲壮な雰囲気が和らいだように感じられた途端、マクロイは眼を赤くした。抑えていた感情がこぼれ出したようだった。
コースに出ている間はあれこれ気に病まないですむと言っていた。そんな状況では、冴えない結果に終わっても納得されていたはずだった。試合は初日からトーマス・ビヨーンがリードして最終日を迎えた。ところが、名高い難コースに上位陣は苦しみ、7打差から淡々とプレイを続けて上がり際に連続バーディーを決めたマクロイに誰も追いつけなかった。
Embed from Getty Images結婚に怖じ気づいたのは格好のいいことではないし、なにより23歳のウォズニアッキの心中を思えば責められてしかるべきだ。しかし同情はできる。プロゴルフの絶えざるプレッシャーの中で若い人生を生きているマクロイが、結婚にまつわる煩雑で悩ましい手続きを経験しながら、自分の願いはゴルフで何かを成し遂げるために最大限の努力をすることだと悟った。たじろぎ、当惑し、二者択一をした。自分をごまかすことは出来なかった。25歳にしてすでに数百億円の財産を手にし、個人的なことも世界に知れ渡ってしまうセレブの宿命を負う若者が、痛ましいほどの素直さを我々の前に示したのだ。
この週のマクロイの勝利は、逃れようのない自責の念を背負いながら、若い、むき出しの誠実さでゴルフに没頭し、自分の天衣無縫の才能を解き放った結果ではなかったか。
ところで、ローリー。次はアダム・スコットみたいに秘密にしてはどう?
(月刊ゴルフダイジェスト誌2014年8月号)
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