ホールが大きく見える

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野球で絶好調の打者は「球が大きく見える」と言う。ゴルフで大きく見えた方がいいのは直径108mmと定められているホールだ。

米バージニア大学での研究で、18ホールをプレイし終えたばかりの46名に、直径90mmから130mmまでの9サイズの円形の黒い紙を見せ、ホールと同じ大きさのものを選ばせた。そして、その日の合計スコアとプレイの出来不出来、最終ホールでのパット数、ハンディーキャップと自分のゴルフの力量についての認識をたずねた。

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スコアは77から123までばらついていたが、少ない者ほど大きいサイズの紙を選んだ。好スコアの者ほどホールは大きく見えていたというわけである。ハンデは7から36までだったが、選んだサイズとは無関係だった。日頃の自分のゴルフのレベル、その日の自分のゴルフの調子とパッティングの出来についての自己評価も無関係だったが、最終ホールでのパット数の少ない者ほど、大きいサイズを選んでいた。

その後の実験で、今度はまずホールサイズをどう認知しているか調べた後でパッティングをさせたところ、ホールが大きく見えている者ほどパットの成功率はよかった。ホールが大きく見えるのは腕前と関係なく誰にでもあり、因果関係は定かでないにしろ、好調だとホールは大きく見え、大きく見える時のパットは入るわけだ。

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心理学の知見を待つまでもなく、我々の世界は万事がそういうことなのだろう。1mのパットが、好調な者には30cmに過ぎず、不安な者には2mになる。それは単なる心理の表現でなくて現実なのだ。

一連の研究で、一方のグループには42cm、他方は2m15cmの距離から10回のパッティングを試みさせたところ、知覚されたホールサイズは、近いパットをした者の方が大きいことが明らかになっている。それも、ホールの大きさを示す時には両者とも実物のホールを1mの近さで見ることができたにもかかわらず結果に差が出た。この際、我々自身を信じて幸せになる方が先決。ラウンド前のパッティング練習の締めくくりには短い距離を繰り返し沈めて、自分の「現実のホール」を大きくしておくと、ゴルフは楽しくなるかもしれない。

(2011年11月10日付毎日新聞夕刊掲載)

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