(4) ジョー・ジェムセック

ディック・ウィルソンに設計を依頼し、ダブスドレッドと名付けたのはジョー・ジェムセック(Joe Jemsek)である。移民の2世で、コグヒルのキャディーだったジェムセックは立志伝中の人物。米ゴルフマガジン誌(GOLF Magazine)が88年に、アメリカのゴルフ100周年を記念して100人のヒーローを選んでいるが、ジェムセックもその一人に選ばれている。

17歳でプロになるがツアーになじめずコグヒルに戻ってコース運営を学ぶ。39年にシカゴ近郊のコースを10万ドルで買い、当時にはなかった、“プライベート並みのスタンダードで運営するパブリック”として大成功させる。そして51年にコグ家からコグヒルC.C.を買い取り、理想を追求するべく自ら第3、第4のコースも造った。はっきりとした理由はまだ調べていないのだが、自分のプライドをかけたコースの名前にダブスドレッドをいただくのだから、思い入れは強かったに違いない。

「父はゴルフをする多くの人々に、プライベートクラブでのゴルフと同じものを経験してもらいたいと、いつも願っていました。シカゴにあるトップクラスのカントリークラブに匹敵するコースを造って、いつの日か全米オープンや全米プロを開催したかったのです。ディック・ウィルソンとジョー・リーに頼んで1964年に完成した時、ダブスドレッドはパブリックゴルファーにとっての全米唯一の、本物のチャンピンシップ・クオリティー・コースだった。この国のパブリック・ゴルフのあり方を変えたのです」*

“My father always wanted to provide a private golf experience to the golfing public,” said Frank Jemsek, CEO and Owner, Cog Hill Golf and Country Club. “He wanted to offer a golf course to rival the top country clubs in Chicago and one day host a U.S. Open or PGA Championship. He asked Dick Wilson and Joe Lee to build it and when Dubsdread opened in 1964, it was the nation’s only true championship-quality course for public golfers, raising the standard for public golf in the country.”

息子のフランク・ジェムゼックはリース・ジョーンズ(Rees Jones)に依頼して2008年に改修、改造を行った。 リース・ジョーンズは、かのロバート・トレント・ジョーンズの2番目の息子で、ハーバードの大学院を出たあとで父の設計会社に入り、実践経験を積んで独立した。偉大な父の名を受け継いでいる2つ上の兄と比較されることも多いが、1988年の全米オープン開催に先立ち、マサチューセッツのザ・カントリークラブを改造して注目され、以来、全米オープンのみならず、全米プロ、ライダーカップ、ウォーカーカップ開催が決まったコースの改造を手がけてきたことで “オープン・ドクター(the Open Doctor)”との異名を取る。準備は万端、というところだ。ジョー・ジェムゼックのさらなる夢、メジャーの開催も、いずれ実現するだろう。

それにしても、現在のゴルフのニーズを満たすためには、歴史あるコースに手を入れることもやむなしなのか。球と用具、そしてコース管理技術と機器はたしかに変化した。“改造”と言わず、“復元(restration)”という言葉をつかうケースも多い。多分にマーケティングのための言葉遣いなのかもしれないが、当初の設計から失われたものとは何なのか。このゲームはかつての設計家の意図を超えるほど変化したのか。かつては難しかったショットが、現在では簡単にできるようになっているのか。

いまでこそコグヒルのダブスドレッド・コースのグリーンは大きく、コースの全長も7,600を越えるが、できた頃は長くはなく、小さめで高低差のつけられたグリーンと、取り巻くバンカーが特徴だった。そのあたりは、乗せるのに苦労する本家ダブスのグリーンと似ている。ウエスタン・オープンはPGAツアーの起源のような試合で、1899年に第一回が開催された。当時、プロの出場できる大きな試合は1895年に始まった全米オープンしかなかった。コグヒル・ダブスで行われるようになったのは1991年からで、グレッグ・ノーマンが当初の3回連続で2位になっている。最終日のバックナインで崩れるのは“ガラスの顎”ノーマンの語り種だが、BMWチャンピオンシップと大会名を変えた現在もなお、コグヒル・ダブスはツアー屈指の難コースだ。

 


*) Dubsdread course at Cog Hill Golf and Country Club in Lemont, Illinois honored in Golf Digest. 2010年10月25日付、http://www.worldgolf.com/newswire/browse/64936-Cog-Hill’s-Dubsdread-Named-Golf-Digest’s-List-Most-Important-Courses-Decade

 

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