私のようなダファーとしてはライダーカップをさらに野次馬的にも楽しみたい。
2年に一度のRCのような伝統的チーム対抗戦では、選手の実力を発揮させ、ときには力量以上のパフォーマンスを実現させる何かがあるに違いないのです。
日頃、選手たちが仕事にしている個人のストローク戦とは違って、マッチプレーであり、パートナーとの相互作用が必要なフォーサム、フォーボールという形式での団体戦。技術、能力以外に、年齢や成熟度、性格、メンタリティー、ライフサイクルなどによって異なる、その選手の個人的要素や生活の重要な出来事、あるいは何らかの要因が作用するのではないかと、私はまったく勝手に思っています。
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1番:プライド要素
国と地域を代表して戦うプライドの強さ、だから負けられないという気持ちの強さ、自分のためでなくチームのためにベストを尽くそうという意識の強さ、名誉の重要視度。
たとえば、メジャー5勝のP・ミケルソンを燃え立たせるのはいまさらお金ではなく、国を代表するプライドのはず。2016年リオ五輪にはぜひ出たいと言っていることからもそれはうかがえる。
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2番:ドリームカムトゥルー要素
幼い頃から憧れ、出場を夢見てきたライダーカップへの思い入れの強さは力になりうる。この要素は必要以上のプレッシャーを生んで逆効果となるかもしれないので、その選手の他のキャラ次第。
たとえば、S・ギャラカーは9歳の頃から、ライダーカップに憧れていたと言います。叔父のバーナード・ギャラカー(8回出場、その後キャプテンとして3度欧州チームを率いた)の存在も、彼の夢を現実的な目標にしてきたはず。
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3番:連帯因子
チームへの一体感の強さ、連帯意識の強さ、フォア・ザ・チーム意識の強さ。
欧州ツアーのカマラデリー(camaraderie)、同胞意識の強さについては、これまでにもよく言われてきた。アフリカやアジア、オセアニアも含めた世界的規模の国際ツアーとして各国を回るなかで、プレイヤー同士が移動や宿泊、食事をともにするうちに同胞意識が育まれる、という話には納得できる。いまやアメリカを主戦場としているプレイヤーでも、駆け出しの頃、一緒にツアーを回っていた同志たちとの絆には深いものがあるはず。
一方のアメリカはもともと移民の国でも、いまやひとつの国として底辺はつながっているわけで、だから逆に普段は個人個人がばらばらであることを好むような気もするが、何かスイッチが入れば、ひとつの国旗の下にまとまるしか行き場がない、という点で強いのではないか。むしろ欧州サイドの方が、基本的に別の国からの選手が便宜的に集まっているだけに、放っておけばバラバラになりやすい。
個々の選手のキャラが米欧それぞれのスイッチになるかもしれないと考えてみると、Gマックとマキロイ、ポールターとローズの絆が欧州サイド全体を巻き込めれば強いように思われるが・・・。
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4番:バウンスバック要素
スランプに陥りながら蘇ってきた者、その過程にある者、どん底を経験したもの。スランプ脱出要素、「復活への道」ファクター。
9回連続の出場となるL・ウエストウッドはメジャー無冠の元世界ランキングナンバーワン。2002年にはライダーカップがきっかけでスランプを脱出した経験もある。ライダーカップこそ自分が自分の力を証明できる場であるという思いが潜在的にあるのではないかと私はにらむ。同じく元世界ナンバーワンのM・カイマーにも復活ファクターを感じる。
H・メイハンは2010年最終日に勝敗の掛かったGマックとのシングルで3ダウンから巻き返してオールスクエアにもち込みながら17番ホールでアプローチを大ダフりして負けた。世界が注視する決定的場面でのダフりのイメージは2年後にも残酷な影響を及ぼしてメンバーになれず、今回は4年ぶりの雪辱戦ということになる。
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5番:瀬戸際ファクター
切羽詰まっている状況、崖っぷち、火事場の馬鹿力的要素。年齢やスポンサー契約など、キャリアの大きな節目に来ている者など、後がないという状況も力になる。
ベリーパターが不可となるのは実質的に来年の秋からになる。K・ブラッドリーは母親にも言われてすでにノーマルパターを試したようだが、潜在的な意識として最後のチャンスだと感じてはいまいか。
一方、12年ぶり3回目の出場となるT・ビヨーンにも、これまで何度も出場のチャンスを逃し、悔しい思いを噛み締めてきたことが一気に爆発力になるかもしれない。ビヨーンには、キャリアのまとめにはいっている切なさも感じる。
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6番:自己解放因子
何かの壁を突抜した者、自由度の大きい者の強さ。R・マキロイは5月に婚約破棄をしたまさにその週に欧ツアーの大舞台で逆転優勝を遂げた。マキロイのなかの天才を解放するきっかけとなったに違いない。自分を縛るものを解放した者は強い。
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7番:なにくそファクター
反エリート意識、叩き上げ、雑草ファクター。
たとえば、I・ポールターは、アマチュアの戦歴はまったくなく、プロとしてのキャリアをクラブのアシスタントプロから始めた叩き上げ。エリートジュニアからプロ転向した選手に多いなかで、前回のメダイナでのように、マイケル・ジョーダンにさえ拳を向けてみせる反骨の強さがある。
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8番:おむつファクター
英ゴルフ・ベッティング界のグールー、キース・エリオットが使っている言葉だが、ここでは子どもが生まれたばかり、または生まれそうなプレイヤーについて言おう。
米プレーオフで驚きの大立ち回りの末にフェデックスカップを獲得し、直後に娘が生まれたB・ホーシェルや、父となった翌週にオランダで勝ったP・ケイシーが最近の顕著な例。
J・ドナルドソンは2歳の息子が生まれた時に初優勝、二人目の女の子が生まれて2勝目。子どもが生まれるごとに強くなり、獲得賞金は大幅に増えて行った。Gマックも8月に自分の第一子、H・ステンソンももうじきのようだ。
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9番:配偶者ファクター
配偶者が単なる応援団でなく、直接的にゴルフに関わっている度合いの強さ。
初出場のP・リードは奥さんがキャディーをするRC史上初めてのケース。確固たる自分の世界を持っていそうな彼の場合、勝負の場面での奥さんの存在がいっそうの防波堤にもなり、相手に撹乱されることなく、試合に飲まれることなく実力を発揮させるのではないかと・・・。
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10番:代理的、比喩的因子
他者に夢を託された、難病など困難に直面している誰かのために、死力を尽くして戦い抜く姿を見せたいという願い、見せようという決意と態度。
マスコミに報じられていなくとも、もしかしたらこういう物語をもって出てくる選手はいるかもしれない。
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11番:弔い要素
自分にとって重要な人物が他界したことで、試合で全力を尽くすことに追悼の念を込めようと思い、または恩返し的な意味を見いだしている場合。
前回のメダイナで最終日の大逆転劇を演じた欧サイドのキャプテン、ホセ・マリア・オラサバルの閉会式でのコメントには泣かされた。用意した原稿を読んだ後、欧サイドのメンバーたちに向き直ってねぎらい、こう言った。
「みんな死ぬんだし、いま全員がここにいるわけじゃない。でも君たちは今週もう一度私に、生きていると感じさせてくれた」
そして会場の欧州ファンが連呼する名前に応えるように言った。
「いまどこにいようとも、彼はたいへん喜んでいることを、私は確信している。」
予定稿になかったアドリブだろう。言わずもがなのセベのことは、もう口に出さないでおこうとしたのではないかと思えたが、その抑えた言葉になおさら思いが込められていた。
今回のP・マギンリーは、先日亡くなったボブ・トーランスに長く師事していた。自分が二度出場して二度とも勝っているライダーカップでのキャプテンとして臨む今回は、いわば一世一代の晴れ舞台でもある。
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12番:霊感・あやかり因子
インスピレーションを刺激されること、やる気を高めさせること、潜在力を引き出す特別な出来事があった場合。
アイドル、尊敬する人物になぞらえられる出来事や事情がある場合。たとえば、ベン・ホーガンに心酔しているプレイヤーにとってのメリオンやカーヌスティー。紛失していた愛用のボールマーカーが見つかったとか、優れたプレイヤーの愛用品を借りてきた、尊敬する先達やアイドルと同じウェアや何らかの技術、スイングのルーティンなどを真似る、といったこと。
前回の最終日の欧サイドは、1984年にセベがセントアンドリュース・オールドコースで勝ったときのセベのシルエットの縫い込まれたウェアを着ていた。ウィニングパットを決めたときの喜びの勇姿は、セベ自ら左腕にタトゥーしていたもの。
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13番:呼び水ファクター
好プレーや潜在力を引き出すおまじない、呪文的な言葉をもっていること。
ルイ・ウーストへイゼンが全英オープンに勝ったときには、一打一打、左手の手袋にしるしたマークを見てからスイングに入った。今年の全英オープンではR・マキロイが「プロセス&スポット」と唱えていたという話。
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14番:ヤンキー要素
精神科医の斉藤環さんのいうアゲアゲ・メンタリティー。ここで言うのはゴルフでのことだが、スマートな打算や、逃げることを嫌い、ヒロイックなショットに挑むことを良しとする態度。のるかそるかの勝負にかける乾坤一擲の美学。ノリノリ要素。
マッチプレーでは成功確率は度外視して、ヒロイックなショットに挑む、ということも必要だが、最後はプレイヤーの個性がにじみ出るだろう。結果的に勝負の場面を面白くするファクターと言ってもよいかも。
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15番:故障・病気ファクター
ゴルフではよく「けが人、病人に注意」と言う。故障や不調を押して出場した者が優勝する例は枚挙にいとまがないから、注目しようという意味である。
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16番:悪天候適応力
出身地や慣れ親しんだプレー環境は悪天候への適応力を左右する。
雨のなかのゴルフは特別なことではないと思える者はそれだけで1アップ。スコティッシュ、アイリッシュな天気になるかもしれない。風にはオクラホマでゴルフをしていた選手も強いか。
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17番:お祭り好き因子
短期イベントとなると燃える者、学園祭的ノリの好きな者は強そう。
今年のメジャーすべてでトップ5に入ったR・ファウラーは大舞台になると燃えるタイプ。
18番:ゲームズマンシップ因子
駆け引きの好きな者、策士度とも言えるか。
セベ・バレステロスのようなナチュラルな勝負師もいるが、相手のプレーに何がしかの影響を与えることを狙う行為、発言を意図的、計画的に行うことも、これまでのライダーカップでは見られた。
1999年、D・クラーク、L・ウエストウッド組とT・レイマン、P・ミケルソン組のフォーボールでは、次のホールへ行く前に欧サイドがパッティングの練習をして、先に行っていた米のふたりを待たせる戦法(?)をとった。
じれた米ふたりは欧組がティーに完全に到着するのを待たずにティーショットを打つという反撃(?)に出て、両者間は険悪なムードに・・・。
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19番:花・カリスマ因子
花は感じられるもので説明しにくいが、若々しさ、スイングの美しさ、立ち居振る舞いの優雅さ、といったものをあげることは出来る。
スター選手が揃うライダーカップでも、ひときわオーラの感じられる選手はいる。
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番外:打算的野心ファクター
ライダーカップには賞金がない。だからこそ出場選手の商品価値を高める。
ライダーカッパーとなれば箔がついてスポンサーとの契約交渉に反映される。
プロとして、そのことを重要視している度合い、そのことによる動機付けの強さ。ハングリーさ、重大な借金、投資損失からの挽回狙い、といった動機はあり得る。