ガルシア、ファウラーのグッド、グッド

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ところで、マッチプレイには独特のルールがありますが、その一つが「コンセッション」。相手のボールが止まっている場合、次のストロークでホールアウトするものとみなして、実際にストロークするのを免除することができます。「コンシードする・コンシードされた」ということになるわけですが、コンシードされたサイドは、それを辞退することはできません。もちろん、コンシードした方が取り下げることはできません。

2014年アクセンチュアマッチプレイの3回戦、セルヒオ・ガルシアとリッキー・ファウラーのマッチには興味深い局面がありました。ガルシアの2アップで7番グリーンに上がってきたふたりは、ともにパーパットを前にしていました。ファウラーが5m半、ガルシアは2m。ファウラーが不利という場面で、ガルシアが突如、「ハーフにしたくない?」とファウラーに言いました。何のことやらわからないでいるファウラーが「え、なんて言ったの?」と応えると、「ハーフにしたいだろ。ハーフにしよう」と言ったのです。

つまり、ファウラーのパーパットをコンシードするから、ここは分け(ハーフ)にしようぜという意味でした。決めなければ3ダウンになってしまうファウラーとしては願ってもない申し出なわけで、ファウラーはガルシアのパーパットもコンシードして次のホールへ向かい、その8番はガルシアに取られて3ダウンになりましたが、9番からの10ホールで5つのバーディーをとって盛り返し、18番で1.2mのバーディーを決めてマッチをものにしました。ガルシアは逆転負けを喰らった格好になりましたが、あの7番の5m半のパーパットのコンセッションは何だったのか。

前のホールのグリーンでガルシアが競技委員を呼んで救済措置を求めたことで時間がかかり、バーディーパットを前にしたファウラーがかなり待たされ、結局、そのホールは両者パーで分けたのですが、そのことをガルシアが申し訳ないと思ったというのが動機だったようです。ガルシアが救済措置を求めたのは、球の近くに蜂が群がっていたため(ガルシアによると少なくとも20匹、ファウラーによれば50匹以上)でした。子どものころのひどい経験からガルシアは蜂嫌いで、2度のドロップとなって時間がかかりました。

「父親からゴルフはそういうゲームだと教えられて育った。6番でのドロップは時間がかかりすぎたので後味が悪かった。自分がファウラーの立場だったら面白くないと思ったでしょう。だから7番ホールでその罪悪感を払拭して気分よくなろうとしたのです」

まったく後悔なんてしていない。負けたけれども、少なくとも気分よくコースを後にすることができる、と言ったガルシアは、「ゴルフは最近、あるべき姿を外れている」とも言っていました。

皆さんは、ガルシアとファウラーのコンセッションをどう思いますか?

①ガルシアは正しいことをした。罪悪感を抱えたままでは実力を発揮できないし、この件はスポーツマンシップと呼べる行為で、相手にも好影響をもたらした。

②相手を待たせた後味の悪さを、気前のいいコンセッションで払拭しようというのは正しい行為ではない。

③マッチプレイにコンセッションというルールがある由縁は、こういうケースの起こりうることも含めてのこと。あくまでも当事者の判断が尊重されるべきであり、批判に当たらない。こういうことで、ゲームは面白みを増す。

④ガルシアは相互コンセッションを持ちかけるべきではないし、ファウラーはそれを拒否すべきだった。勝負に情けは無用。ルールの中で、あらゆる勝機をつかもうと最大限の努力をしてこそ競技には価値がある。

⑤ファウラーは賢い。状況は不利だったから、相互コンセッションを受け入れたのは正しい。事実、後のインタビューで、「僕としては、プレイを続けたい気持ちがあったけど、あの状況ではハーフを受け入れなきゃ馬鹿だぜ」と言っていた。

⑥ガルシアは去年、タイガー・ウッズへの人種差別的発言など、自分の不注意からつらい思いをした。先にカタールで勝ったとき、「今年は周囲の人たちを幸せにしたい」と言っていたし、その気持ちの表れではないのか。プロだから、それぞれの判断があってこそ、ファンも楽しめる。

⑦ガルシアは2007年のドラールで、ホールアウトした後のカップの中につばを吐いて男を下げたことがある。さらに以前は、プレイ中に切れてスポンサーの看板を蹴り上げたり、靴を投げたりしたこともある。そういう時代を経て、34歳になったガルシアは改めて父の教えを思い、成熟したゴルファーになろうとしているのではないか。(2014年2月)

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