「オーナーとオナー」

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ティーショットのオナーを「オーナー」と言ってしまえば、かなりの率で同伴競技者に嗤われるかもしれません。言い方ひとつで“ゴルフ教養”が知れる、とかなんとか言われたりして。でも、あんまり硬いことを言わない方がいいんじゃないかと思うのです。

ゴルフのオナーは英語の“honor”で名誉、特権と言った意味。ゴルフではティーショットを最初に打つ権利、またはその権利を有するプレイヤーを指して使いますよね。ゴルフについては記述を辿れるだけで19世紀後半から使われているので、正統的ゴルフ用語の一つと言っていいでしょう。この“honor”は読み方をカタカナで書いて「オナー」と表記されるのが一般的。「オーナー」と言ったり書いたりしてしまうと、我々は「所有者」の意味の“owner”のことだと考えるわけです。確かに、我々はそういう感じの暗黙の約束で使い分けているはずですが、目くじらを立てるほどのことはないのではないでしょうか。

カタカナ表記はきわめて便宜的なもので、たとえば英語のfやv、thやrの絡むような音は日本語に無いために、カタカナで書ける近い音に置き換えているわけでしたね。日本政府は「内閣告示」というお達しでその基準や法則を示してくれています。しかし、現実はケースバイケース、というよりかなり場当たり的と言えそうですし、伸ばす音、長音については、綴りから決めてしまったのではないかという慣用表記があったりします。日本語には発音の高低のアクセントはあっても、基本的に英語のような強弱のアクセントがないことも作用して、カタカナ表記は元々の英語の発音からかなり離れてしまいます。

さらに、英語がいったん日本語に取り込まれると、日本語の話し言葉の法則が作用してします。“owner”は、英語の発音から音だけ拾えば「オウナー」と表記されるはずのところが、「オーナー」になっています。話し言葉では、母音が重なった場合は「伸ばす音」にされる、「二重母音は長音化される」という法則があります。英語を日本語の中で使おうとすると、こうやってもともとの発音から離れて一人歩きをしてしまうわけなんですね。

カタカナ表記は所詮、妥協の産物なので、こだわりすぎるとかえっておかしな理屈になってしまう。“honor”は「オナー」でも「アナー」でもあり得たし、「オーナー」と書かれても読み方一つで間違いではないでしょう。「キミがオーナーだよ」と言われて、「ぷっ!」と噴き出したりしてはいけません。だいたい、ボギーの“bogey”だってホントは「ボウギ」でもよさそうなものだし、英語圏の人だって「ボーギ」にも「ボーギー」にも聞こえる言い方をするわけですから。(2015年2月)

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